千昭→真琴
※本編を若干無視してる気がしないでもない





広いグラウンドにいるのはたった3人。

黄土色の地面は、でこぼこしてるし土埃が上がってあまり良い状態ではない。


目の前には、いつもはかけてるメガネを外して、バットを構える悪友の功介と、スカートの短さも気にせず足を振り上げて白球を投げる真琴。

「ぃよっしゃー!!

いくぞ功介ぇ!くらえ!!
あたしの魔球!!!!」


慎みなんてまるでない、でかい声で自信満々に真琴は言って本日何球目かのストレートを投げる。

(また女投げだ…。)

ニヤリと笑った前で、功介も呟く。

「魔球って…。」


苦笑混じりで吹き出した功介の手が、ぐっとバッドを握った。


カキィィィィィン


浮いた球は、難なく振り回されたバッドに辺り、空へと吸い込まれた。

うちあがったボールを口を開けて見送った真琴が悔しそうに叫ぶ。

「あーくそぉ!!!
なんで千昭外野にいないのさ!?」


「お前が打たれねぇから外野いらねぇって言って、キャッチャーやってんだろー?」

そう言ってやると、ムッツリ黙り込んでそのまま遙か彼方へと飛んでいったボールを取りにとぼとぼ歩き出した。


(可愛いやつ…。)


去ってゆく背中に、ぷ…と小さく吹き出すと、目の前のホームベースにゴトンとバッドがおろされる。


「あいつ…バカだよなぁ。」

にやついた功介も同じように思ってたらしい。


「まぁ、そこが可愛いんだろうな。」


他人ごとのように話すが、そこも考えは一緒なようだ。


「まぁ…バカなのが可愛いってのもどうかと思うけどな。」
「んなこと言って…千昭はあいつのそういうとこが好きなんだろ?」

「はぁあ;?//」


慌ててやつを見ればニヤニヤしている。

(なんだよ…からかいやがって…;。)



普段そんなことしないくせになんでかからかってくる親友を睨みつける。


「お前だって…そうだろ?」


「まぁな。
でもあいつ恋愛興味ねぇ…って言うか…拒んでるからなぁ。
そういう話。」


からかい返してやろうと思ったのに、あっさりと返されて少し拍子抜けした。



「お前言うのか?」

「……は?何を?」


今度は真顔だったから、もうその話は終わったのかと思った。

すると少し呆れた顔の功介が、苦笑を漏らす。


「好きだってことだよ。
真琴に告ったりしねぇのか?」


頭の中が、真っ白になった。


(俺が…告白?)


「なっ…」
「っしゃー!!次こそ本番なんだから!!!」


自分でも何を言おうとしたのかわからない。
でも何か言おうとしたとき、ボールを拾ってきた真琴が、すでにマウンドに立っていた。




真琴を挟んで並ぶ帰り道…自転車を押してるのは俺だけだった。

「真琴チャリは?」

「それがさー、朝乗ろうとしたらパンクしててさ。
だから歩き…最悪だよー。」


「あーそれでお前今日遅刻したのか。」


交わされる二人の会話を、千昭はぼんやりと聞いていた。


「じゃ、俺こっちだから。」


いつもの分かれ道、功介がいつものようにそう言いながら、何の意思表示か俺に片目をつぶって見せた。


(ウィンクすんなよ…気持ちわりぃから。)

なんも知らない真琴はいつも通り功介に手を振る。


(告白って…んなもんできるかよ。)




いったいこの想いを告げてなんのメリットがあるのだろう?

いづれ未来へと帰る自分は、本当なら軌跡すら残してはいけないのに…。

気づけばこんなにも欲張りになっていた。

本当はつれて帰ってしまいたいくらい好きなのに…


(言えるはず…ねぇだろ?)










「千昭?」

はっとして横を見ると、訝しげな真琴が千昭を見上げていた。


「どうしたのさ?
そんなに眉しかめて。」


周りを見れば、さっきの分かれ道のまま、功介だけがそこにいなかった。


「千昭?」

「あぁ…悪ぃ、考えごとしてた。

後ろ、乗れよ。」


自分の気持ちを誤魔化すように話をそらして言うと、真琴は嬉しそうにガッツポーズして後ろの荷台に跨る。


(…やばいな…。)


可愛いとか思って…

その気持ちが積み重なって

どんどん好きになっていくんだ。

静かにペダルを漕ぎ出す。

口は後ろの愛しいやつと軽口を叩き合って。

溢れ出すこの気持ちを言葉に乗せて、

ただ一言「好き」…と言えたなら
どんなに…

キイィィィッ

「どわっ;!!」

自転車が軋んだ音をたてて止まった。
真琴は勢いよく俺の背中に顔から突っ込んだらしい。



「どうしたんだよ?」


鼻を押さえながら、真琴が俺の背を軽く叩く。
そんな仕草すら愛しいって言ったら引くよな…

功介は確実に笑うな。


「なぁ…真琴。」


背を向けたまま、振り返れない。

けれど、そっと自転車から降りた。俺の真剣な雰囲気を悟ったのか、真琴も荷台から降りる。


「真琴…俺…
お前が…。」



その先が怖くて出てこない。
振り返って真琴の真っ直ぐな目を見て、抑えられない気持ちが言葉を後押しした。


「お前が…。」



目の前に大好きな君。
俺を見つめたまま…言葉を待っている。


(言えねぇよ…)


「…千昭…?」

押し黙る自分に訝しげな真琴に、ふいに笑みが漏れた。

「なんでもねぇ…。」
「え?
なっ;//!?」


急なことに困惑する真琴の声がすぐ横で聞こえた。
そっと抱きしめて真琴の感触を身体に染み込ませ、目をつぶった。




瞼を開くと、さっきいた分かれ道。

功介はいない。

隣に立つ真琴が、こちらを困ったように慌てた様子で見ていた。

「ど、どうしたのさ?
…悲しいことでもあった?」

「え…?」

気づけば、頬を涙がつたっていた。

なんで泣いてるのかわからなかった。


ただ、目の前の真琴に涙の理由を誤魔化しながら、

さっきまで自分がいた、数分後の未来。
そこへ残してきた数分後の真琴に、心の中で
ごめん
と呟いた。




好きだと…言いたかった。

怖くて君の答えなど聞けなかっただろうけど…。

それでも…君に伝えたかったんだ。

ただ1人…


大好きな君に。




()

今更心の中で呟いたところで鈍い君には
何一つ伝わらないけれど





妄想サーセン


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