千真
再会後・真琴は大学生





朝起きて、大学行く前に必ず寄ってしまうのは、まだ信じられないからだと思う。


わかっていながら、今日もあるアパートの一室の前に立ってチャイムを鳴らした。





「…お前…そんな毎日来なくたって大丈夫だよ。」

ソファーに腰掛けクスクス笑ってモーニングコーヒーを飲んでいるのは、最近この部屋に住み始めたオレンジ色の髪の青年。


「だってさ…。」


口ごもるのは、青年が住み始めてから1日も欠かさず朝に訪ねてくる女子大生。

2人が出会ったのは数年前。
青年が生まれたのは数百年後。


「真琴。」


そう言っていつも彼が差し出してくれるココアが真琴は好きだった。


「コーヒー飲めねぇなんてお子ちゃまだな。」


からかう千昭にますます拗ねる真琴の頭を、千昭は笑ってぽんとたたいた。


「今日…午前だけだろ?
午後どこか行こうか?」


(ぐっ…ずるい////)


屈託なく笑う彼にいつも真琴はなにも言えなくなってしまう。


「買い物…。」
「おっけ。」

やっぱりクスクス笑う彼を恨めしげに睨んでもやはり効果はない。

「ほら、行ってこいよ。学校。」


こうやっていつも見送ってくれるから、いつもここにきたくなるのかもしれない。

でも…

ぽんぽんと優しく叩いていた手が、今度はガシガシと頭をなでくり回す。


「真琴ー?」

「やだ!」

「へ?」

「…もうちょっとだけ…ここにいたぃ///」
「っ!!///」


真っ赤になったままこっちを見ようとしない真琴に、千昭は笑みを漏らした。

(可愛いやつ…)

「真琴…。」

名前を呼ばれて顔を上げる。
…と
コトリとローテーブルの上にコーヒーの入ったマグカップを置き、千昭はこちらに手を伸ばした。

「?」


向かいのソファーに座った真琴に、その手はまっすぐ伸ばされている。


「おいで…。」

「へっ;??/////」


恋愛にまったく免疫のない真琴に対してその言葉はまさに爆弾だ。
首まで真っ赤にした真琴はとうとうその場で動けなくなり、千昭は笑うのを堪えつつ、自ら真琴の隣に腰掛けた。
もう少しからかいたくなって、肩に手を回し、息がかかるくらい耳元に近づいて名前を呼べば、案の定跳ねる肩。

ぶはっ

とうとう堪えきれなくなった千昭は吹き出し、それを見た真琴は真っ赤になって暴れ出した。


「からかったな!
千昭のばか!!!!///」


なかなか収まらない笑いをなんとか堪えつつ暴れる真琴を掴まれた。


「笑うなっ!!////」
「ごめん。悪かった!ぶぷっ
ホント謝るから落ち着け。くく」
「笑ってんじゃんか!!!!
もーいい!学校行くから!!!!」


そのまま立ち上がろうとした真琴の腕を、千昭が引っ張り、反動で真琴の体は千昭へとよろめいて捕まった。


「ごめん。からかって悪かったよ。
その…なんか、こんな時間が幸せすぎてさ。」
「…。」
「もう未来へ帰らなきゃいけないって考えながら生活しなくていいと思うとさ…。」
「千昭…。」

膝の上に乗っていた真琴が千昭の顔を見上げる。

「でも一番嬉しいのは、もう真琴に嘘つかなくていいってことなんだ。」

真琴の腰に回された腕がキュッとしまる。
「隠し事ばっかして生きてくのもやだったし…誰にも何も相談できないのも苦しかったんだ。」


だから今が幸せだと彼が笑う。


「あたしも幸せ。」

もうあなたを想って1人泣く必要もなくなったから。

毎朝ここへくれば、あなたがいて
私のためにココアを作ってくれて
いってらっしゃいって…言ってくれるから。

あなたの腕の中がこんなに幸せって知ることができたんだもの。

でももう時間だから…

と、真琴はいつものように見送ってくれる声を背に、大好きな空間を後にした。




もう終わることのない日々を
これからもよろしくね






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