千昭→真琴






この瞬間が
止まってしまえばいい


タイムリープの装置が壊れてしまえばいい

でもあそこが俺にとって帰らなきゃいけない場所だから。


君がくれたこの両手いっぱいの思い出が俺一番の宝物と思って


俺はきっと帰るだろう


君のいない未来へ








お前と出会ってからの月日の流れは、ほんとに早い。
気づけばいつだって横にいたから。

3人でいれる時間が幸せだったよ。

もう本当は帰らなきゃいけないんだ。

けど、もう少しだけ…
そばにいさせてほしい。






「お前…時々ホントに幸せそうに笑うよな。」


強い日差しを遮ってくれる大きな木の下のベンチで、隣に座る千昭に功介が笑って言った。

「え…?」
「でも時々…うん、なんかつらそうだ。」


今さっきまで笑っていた功介の顔が、気遣うような顔になり、つい弱音を吐き出してしまいたくなる。

けれど千昭はそれに笑ってごまかした。


「ハハっ何言ってんだよ。
まぁ…幸せではあるよ。」


つらいわけない。
こんだけ幸せなのに。
だって未来では…

「俺はずっと1人だったから…。」


「え?」
「あ…何でもねぇ。」


どうやら声に出ていたらしい最後の呟きは、功介にはうまく聞き取れなかったらしい。
いつも真琴と功介にはいろんなものを貰ってる。

今まで未来で渇望しても手に入らなかったものばかりだ。

だから帰れないのかもしれない。

未来へ帰るにはあまりにも心残りが多くて。


「待たせたな☆」

顔を上げると、ニシシと笑った真琴が立っていた。
女のくせにちょっと乱暴な言葉使いのこいつがどうしてこんなに愛おしいんだろう。
無反応な俺を置き去りにしてじゃれあう2人を見ると、胸の辺りがもやもやしてくるのはなんなんだろう。

ひょっとしたらこれがやきもちか?


「わぶっ!!」


楽しそうに笑っている真琴の顔にグローブを被せた。
俺の狙ったとおり、功介に向いてた目はつっかかるようにこちらを写す。
と同時にその横にある功介の顔が途端に不満げにしかめられた。


「なにすんのよ千昭!!」

「野球すんだろ?」


へらっと笑うと真琴は子供のようにそっぽを向いた。
こいつ可愛いよな。


「ふーんだ!!
意地悪すんなら功介と2人でするもんね。」



そんなこと言われて柄にもなく焦った。


「…悪かったよ。てか2人で野球ってキャッチボールだろ?」

「うっ;」


真琴の手にはしっかりバッドが握られている。

「しょうがないから許す!
ほら行こう!!」

ホントかわいいやつ。

…手放したくないよ。ホント…



泥だらけになって、帰る道。じゃれあいながら、軽口を叩きながら帰った。


「お前…体力ありすぎ。」
「千昭がなさすぎなんだよ。」
「だからって夜になるくらいまでやるか?」

真琴が功介から三振をとるまでと粘り、結局暗くなってボールが見えなくなってようやく帰ることになったのだ。


「まっ…まだあっちの空オレンジだもん。」

分かれ道で分かれたあとの帰りの道は、2人で自転車を押して歩く。


「オレンジって…
もう月とか星とかでてんじゃん。」


真琴の言うように西の空は茜色だが、東の空にはすでに少しずつ星が浮かび始めていた。


「あ、北斗七星!!」
「お前なぁ…;」


話を聞いているのかいないのか、彼女の瞳は輝き始めた星々に奪われていた。

「…綺麗だね。」
「…ったく。」


ため息をついて上を見上げれば、彼女の言うように綺麗な星。

未来では、見たことのない輝き。
あの世界には何もなかった。


「時間が止まったらいいのに…。」


俺の息が止まるかと思った。
横を見れば、やっぱり空を見上げたままの君。


「時間…止めてほしいのか?」

「うん。だって…そしたらずっと2人と高校生でいれる。
…3人で野球できるでしょ?
千昭もそう思わない?」


にっと笑った真琴に、笑って答えることしかできなかった。


今心からそう願っているのは俺だと言いたかった。


『でも…時々つらそうだ。』


あの時の功介の言葉が頭の中に浮かんで消えた。


(そうだな…
ちょっと…つらい。)


2人と…真琴といるときが一番幸せなのに、この幸せな時間がどんどん過ぎていく。
過ぎていく過去がだんだん思い出に変わって、俺をつなぎ止める。


なぁ…時間…止まってくんねぇかな?


タイムリープの装置なんか壊れたらいい。
こんな思い出だらけじゃ、帰るのが怖くなるじゃないか。

「千昭?」

見上げる彼女も、共に連れて帰りたくなるじゃないか。


君との時間が

君自身が俺の宝物。


俺は君を思いながら帰るよ

君のいる場所が俺の安らかな世界


できたら、
君にとっても俺がそうなれたらよかった


いつまでも
いつまでも

果てしなく遠いときの中で

きっと1人

君を想うよ








GReeeeNの同タイトルの曲が千真すぎる



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