千昭→真琴
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*
わんわんと鳴く蝉の声が、温い風の抜ける校舎の中にも届く。
じっとりとかいた汗が、頬をつたって白いワイシャツへと落ちた。
今日の授業は午前だけの日で、開けっぱなしの窓からは運動部員たちの声が聞こえてくる。
目の前には、クラスの男子と男勝りな…でも自分には一番愛しい少女。
教室の真ん中にいる二人の手には、使い古されて掃く方の毛先がやや曲がってしまった箒があって。
教室のドアの前にいる自分の手には、さっき捨ててきたゴミが入っていたゴミ箱があって。
まぁ、いわゆるめんどくさい掃除当番なんだけど…。
自分がなんでこの大きな箱を掴んだまま棒立ちしているのかと言うと、
「紺野って好きな男いるのか?」
そんな話をしているもんだから、自分じゃ聞けないその話の終わりが来るまで多分動けない。
「はぁ?なんでそんな話になるかな…?」
箒の柄を両手で持ったままの真琴が、此方に背を向けて誰かの机に腰を落とす。
掃除は既に終えているみたいだった。
「いや、お前でも好きなやつとかいるのかなぁ…?とか興味わいてさ。」
男子の目が泳いでいて、(あぁ、こいつも真琴が好きだったのか…。)とたまに真琴にじゃれに来るその男子の姿を思い出した。
「なんだよそれ!
どうせ私にはそんなのいないわよ!」
心外だ!と言わんばかりに膨れっ面をしているであろう真琴の顔を思い浮かべつつ、俺は胸を撫で下ろした。
―それも束の間。
「千昭か功介のどっちかが好きなんじゃねぇのか?」
「ハァ;!?」
思わず自分の口からも真琴と同じ言葉が飛び出してしまいそうだった。
いきなり前置きなく担ぎ出された自分と功介の名前に、かなり動揺した。
何故なら本当に自分でも気になっていたことだったから。
自分のことはさておき、自分なんかよりずっと長く付き合いのある功介に少しも恋愛的な感情は抱かないのか…。
「お前よく一緒にいるだろ?」
続く質問に、息を飲む。
「私は…」
蝉の声も
窓の外の運動部の掛け声も
今の俺と、真琴の横に立つ男子の耳には届かない。やけに響いたのは、真琴が立ち上がったと同時に上がった机と床が小さくぶつかる音。
「"好き"とかは、わかんない。」
きっぱり言い放つ真琴の真っ直ぐな横顔が見えた。
「ただ、野球を一緒にしたいと思うのはあいつらだよ。」
ニッとはにかんで笑った顔が、どうしようもなく愛しかった。
(あぁ、かなわねぇや。)
人知れず苦笑をもらして、下ろしかけていたゴミ箱をまた持ち上げる。
息をひとつ吸い込んで二人しかいなかった空間に足を踏み込む。
「じゃあ早く掃除終わらして野球行くぞ。」
「あ、千昭!
遅いよーこっちはもう終わっちゃったんだから!」
無邪気な顔で此方に振り返った真琴が膨れっ面で不満をたれた。
少し残念そうなクラスメイトの顔は見えないフリで、ゴミ箱を教室のすみに置いた。
「じゃあお前がゴミ持ってけよ、こっちはこの熱い中下まで行ってきたんだからな?」
さっきまでの緊張した気持ちなんか忘れ去って、いつもの調子でじゃれあい、カバンを持って教室の外へ出る。
名残惜しそうな男子の目が、こちらを見ているのを尻目に、グシャグシャと真琴の頭を撫でた。
「わっなにすんのさ!!」
「別にー?
ほら、功介が下で待ってるってよ。」
携帯をちらつかせてそう言うと、単純な彼女は「おぉ、急がないと!」とボサボサの髪を直しながら歩き出した。
子供じみた独占欲と優越感を後ろのクラスメイトに見せつけて、真琴に手を出すなよ?なんて牽制を張って見せた。
クラスメイトが少し悔しそうに此方を見ていたのを背中で感じながら二人で教室をあとにする。
でも実際は、自分の立っている位置はあいつとは少しも変わりないのだ。
どんなに想ったところで彼女には伝わらないし、こんなに人を愛しいと思うことが初めてで、"友達"から抜け出す方法なんてわからなかった。
だから結局自分は"ここ"にいる。
「千昭、早く!」
口を尖らせて手招きをする彼女に気づかれようもない胸の痛みを隠して、何時ものようにイタズラっぽく笑って見せた。
何でもないふりして頭をまた撫でる。
抗議の声が上がってこないのは、さっきよりは優しくそのクセッ毛の頭を撫でているから。
この手から少しでも気持ちが伝わってしまえばいい…。
なんて思いながら、また何時ものようにふざけながらちらほらと生徒が歩く放課後の校舎を二人で歩いた。
やっぱり外は、煩わしいほど蝉の声が響いていた。
彼女の中の優先順位
そんなものが決まったら、自分は彼女の隣になれるだろうか。
*
ひたすらみんな真琴に片想いしてたらいいよ!
でもそん中で真琴の中で優先順位が高いのは千昭と功介なのは間違いないと思う←
というわけでハル様リクの図書館戦争か時かけで『甘いけど切ない』ストーリー
…になってない;!!
あわわわ;お待たせしたあげくこの始末…orz
多分また上げますが、そちらこそ甘く切ない話になるよう頑張ります!!(汗)
ヤバイ、ひどすぎる(滝汗)
せっかくのリクなのにすいません;
しかしリクありがとうございました!