美雪(真琴妹)→功介→真琴←千昭





学校は、いつも友達と騒げるから楽しい。でも少しもの足らない。
なんでだろって思ったら、
あの人の顔が浮かんだの






学校からの帰り道、市営の市民に開放されている野球のグラウンドの横を通った時、楽しそうな笑い声が耳に届いた。

その聞き慣れた声にグラウンドの方へ目を向ければ、呆れたことに自分の姉が短いスカートをはためかせて白球を追いかけているところだった。



「あれ!?美雪ー!」


立ち尽くす妹に気づいたのか真琴は嬉しそうにこちらに手を振って寄ってくる。


「今帰り?」


ニコッと笑った真琴の頬に泥がついており、美雪は思い切りため息をついた。


「いつも遅くまでどろんこになって何やってるのかと思えば…こんなとこで遊んでたの?」


その怒った口調が母を思い出させて真琴は「はは…。」と苦く笑った。


「妹に怒られてやんの。」


そういって真琴の後ろからひょっこり顔を出した明るい髪色の青年がニヤリと笑う。

「う、うるさい。」


まるで子供のようなやり取りに、呆れてため息をつこうとしたとき、もう一人が苦笑して止めに入った。


「こら、ガキかお前ら。
えっと…ミユキちゃん?
しっかりしてるな。」


そう言った短髪の彼に、何故だか美雪の瞳が奪われる。


(…??///)


「俺、真琴の友達の津田功介。」

そう自己紹介して美雪の頭を撫でた津田功介を見て、真琴とじゃれていた青年も自分の名を名乗る


「俺は間宮千昭。」


その2人の様子を見て、慌てて美雪も頭を下げた。


「こ、紺野美雪です!
いつも姉がお世話になってます。」


何故か深々と下げた頭を上げると、笑いを堪える2人とそれを睨む姉の姿があった。


それが、あの人…

津田功介さんと初めて会った日だった。

学校への通学路。
いつも通るお店のショーウィンドーに写る中学の制服を着た自分は、まだまだ子供で…すこし悔しくなる。
なんでそう思うのかわからないけれど…ただ漠然とそう思っていた。


「早く大人になりたいな…。」

と。


「どうして?」
「!!!」

呟きに質問が返ってきたことに驚き、変な声を上げそうになったがなんとかこらえた。


「津田さん!」


振り返った先にいた人物にまた驚いて目を見開く。



「功介でいいよ。」


苦笑した功介に、美雪の心がまたギュッとよくわからないものに締め付けられる。


「こ、こ功介さん、いつもこんなに早いんですか?」


緊張で上擦る声を叱咤しつつ、美雪は勇気を出して会話を続ける。
名前がどもったことがおかしかったのか、クスクス笑う功介を見て美雪の頬が僅かに羞恥で染まる。


「いや、まぁ部活があるってのもあるけど…多分アイツが遅いだけだよ。」


功介の言うアイツが容易に姉のこととわかり、美雪は益々恥ずかしさで頭があがらなくなる。

(お姉ちゃんのバカ!!!///)

それに気づいたのだろうか。
またクスクス笑った功介の大きな手が美雪の頭を撫でた。


「ホント、しっかりしてるよ。」
「上がああだと…下がしっかりするんです///」


そう愚痴って上を見上げると、美雪の予想に反して優しく笑った功介の顔。


「真琴はまだまだガキなところあるからな。」

そう言った顔がどこか寂しそうで、美雪の胸が騒ぐ。

その瞳が、
自分を通して姉を見ているのだとわかったからだというのは、後になってわかったことだ。




夏休みももうすぐという暑い日に、姉が目を真っ赤にして帰ってきた。
その腫らした目元とは裏腹に、スッキリした姉の姿が大人びて見えた。
何かあったのかと聞いても、笑って姉は答えなかった。
代わりに、今まで拒むように遠ざけてきた勉強をするようになった。




そんな日から少しして、街中で功介の姿を見つけた。

「美雪ちゃん?」

今まで見たことがなかった眼鏡をかけた姿にドキリとする。

(…かっこいい///)

「制服ってことは学校?」
「あ、はい。部活だったんです!///」

塾の夏期講習からの帰りという功介と並んで歩く。
ショーウィンドーに写る2人の姿を見て、美雪はまた心の中で以前思ったことを呟いた。


「真琴も勉強やってる?」
「あ、はい。なんか突然勉強しだしちゃって…。
あの…最近何かありました?」

「…どうして?」


一拍の間を置いて、功介が問いかけてくる。


「勉強しだす前…目を真っ赤にして帰ってきたんです。
それからはなんか…どこが?って聞かれたら困るけど
変わっちゃって。」


そこまで言って隣を歩く功介を見上げるが、隣を歩いていると思いきや、数歩後ろで立ち尽くしていた。


「功介さん…?」


その姿に不安を覚えて歩みよるが、彼は額を手で覆いながら、何かに苦しんでいるようだった。


「功介さ…」
「俺も…アイツのこと…千昭とおんなじように見てたのにな…。」

悔しげに呟かれた言葉に、美雪は頭を横殴りされたような錯覚に陥った。
どうしようもなく泣きたくなる。


(やっとわかった。
私…なんて鈍いんだろ。)

姉のことを想う彼を前にしてようやっと自分の気持ちを理解した。

(ホント…バカみたい。)
「功介さん。」

そっと固く握られた拳に手を添えると、その手を掴まれ引き寄せられた。


「!!?」
「…ごめん。ちょっとだけ。」


人がたくさん歩く往来で突然に抱きしめられた。
何を言うよりも先に謝られ、どうしようもなく悲しくなった。




初めて人に恋をするということを思い知って、

片想いのつらさを思い知った。

ただ好きな人の腕の中、堪えきれない涙を零して嫌いになれない自分の姉を想う彼を慰めた。

ただ残るのは苦い苦い想いだけ。







この頃の女の子は年上の人に憧れて、でも本人は本気で恋をしてるんですよってゆう話にするつもりだった気がする…


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