堂郁
革命前





わたしの頭をなでる大きな手

その手は時に私の手を優しく引く

その手は時に、私を助ける

その手は時にあたしを殴る

その手は時にあたしを包む






秋も深まる10月の空は、綺麗な綺麗な蒼だった。

久しぶりの公休に、郁は1人買い物を楽しみ、寮への道を歩いていた。
久しぶりの買い物と言うこともあり、1人でのんびりと店を眺めているうちに、気づけば両手は荷物でいっぱいだった。

(調子乗って買いすぎちゃったかなー;?)
オシャレには興味があったが、気をつけるようになったのは最近だ。
それはもちろん、片思い中の彼に、少しでも可愛いと思ってもらえるように。

(うわぁ…////
もぉどっぷり恋する乙女だわ;/////)

1人顔を赤らめつつ、コンビニの前を通り過ぎたとき誰かに声をかけられた。

「おい、気持ち悪い顔して歩くな。」

「んなっ;!?」無礼な言葉に怒りをおぼえて勢いよく振り返ると、そこには郁よりもやや背の低い上司が立っていた。

「き、教官!!///」

堂上は郁の横へ行きつつ、郁の両手いっぱいの荷物を見て眉をひそめた。

「…そんなに買ってどおするんだ?」
「え?あ、いや…ちょっと久しぶりの買い物だったので…
堂上教官は何してたんですか?」

「駅前の本屋いって…そこのコンビニ寄ってきた。
そしたら誰かさんがニヤニヤしながら目の前を通り過ぎていったんでな。」
「うっ…;」

堂上に見られてたとわかり、郁は少し顔を赤らめた。

それを気に止めるでもなく、堂上は寮への道を歩き出した。
郁もそれにならい歩き出そうとしたのだが、たくさん下げた紙袋に足が絡まりもつれた。バランスを崩した体は、そのまま顔から地面へと向かう。

「どわぁあっ;!!」
(転ぶ;!!?)

そう思って身構えたのだが、身体には痛みが一向に来ない。

(あ…れ…?)
「まったく…

お前はもう少し女らしい悲鳴は上げられないのか?」

呆れたような声が、耳のすぐ上で聞こえた。
はっとしてゆっくり自分の状況を確認し、郁は今度こそ「キャー」と叫びたかった。

がっしりとした太い腕が自分の腹部に回り、よろけた身体を片手で支えていた。

「…ぁ…りがとう…ございます…。」

なんとか叫びたいのをこらえてそれだけ言うと、助けられつつ体を立て直す。

すると突然左手の荷物を奪われた。

「え?
ちょっなに…;!?」
「持ってやるからそっちの手を貸せ!」

と、荷物を取られて空いた方の手に堂上の手が伸ばされる。
差し出された手を見つめたまま固まっていると、堂上の手が無理矢理郁の手を奪い取った。

「へ;!?///」郁の手を掴むと、そのまま堂上は寮へと無言で歩き出す。
握られた手をみて郁の顔が赤く染まる。
トクントクンとなる鼓動は、いつか爆発するのではないかと思うくらいに激しい。

(や、ヤバいよ!
手汗が…;///)

「まったく…お前はいつまでたっても危なっかしい。
いつも見てるこちらがヒヤヒヤする。」

そう言う堂上は、先を歩いているため郁からはその表情が見えない。

「あ、危なっかしいってなんですか!?///」

嬉しいような聞き捨てならないような話につい突っかかる。
結局いつもの言い合いやじゃれ合いに発展して、ほっとしたのは郁だけではないかもしれない。
でも繋がれたままのその手は、グイグイと引っ張るくせに、優しく郁の華奢な手を包んでいた。


吹く風は秋の冷たさを運び、つないだ手の温もりをよりいっそう強調させる。

(…暖かいな。
てゆうかカップルみたい…ほんと///)

「またお前は…
何をにやついとるんだ?」

呆れた顔でいう堂上に、郁は少し慌てた。

「え;?///
あ、いや…教官の手、暖かいなぁって…///」

「そうか…。」

それだけ言うと、堂上はなにやら一人考えて、寮への道と違う方へ郁を引っ張った。

「き、教官?////」
「天気がいいんだ。
遠回りしてもう少し歩かないか?」

驚いて言葉がでない郁だったが、みるみるしかめられる目の前の眉に、少し笑みが漏れた。

彼ともう少しこのままでいたいのは自分も同じ。
断る理由などあるはずがない。

「いいですね☆
あたしも…もう少し歩きたいです。」

どうせなら、このまま寮につかなくたっていい。


この道のりが延々と続いていけば、

この温もりは
もう少し
あたしだけのもの


おわり


付き合っていなかろうと天然のバカップル…それが堂郁(笑)


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