堂上夫妻
※微々たる裏






月の光が強く、星の輝きが余り地上にまで届かない、そんな夜。


郁は一人官舎内の自宅で溜め息を溢していた。

時刻を見れば、寮の方はそろそろ消灯時間のはずだ。


(小牧教官を困らせてなきゃいいけど…;)


今日は結婚が漸く決まった小牧宅(男子寮)で、独身最後の飲み会だ!とばかりに、既婚者のはずの篤が同じく既婚者のはずの手塚を連れてうちを出たのは夕方である。


小牧の部屋で飲むことなどしょっちゅうのことで、そんなときは郁も隣の麻子の元へご飯を食べにいくのだ。


お酒は余り飲まないにしても、女同士話は弾んで光が帰ってきて漸く御開きと言うこともままある。

しかし今日は9時を過ぎても帰ってこず、うちで篤を待つことにするか…と、帰ってきたのだ。




「遅いなぁ…

まぁ…明日公休だからいいけどさ。」



入浴を済ませても帰ってこない篤に少しの寂しさを覚えると、郁は取り敢えずテレビをつけた。







ガタンッッ

「…ただいま…」

手塚と篤はフラつく足で何とかうちまでたどり着くと、互いに鍵穴に鍵を差し込むのに苦労しながら自宅へと帰った。


玄関でつまずき、頭を床にぶつけた篤は流石に飲みすぎたかと思いつつも、フワフワした気持ちのよさにそのまま床の上で寝てしまいそうになる。


「篤さん;!?」


玄関から聞こえた音に驚いた郁が走っていくと、珍しくも泥酔した夫が玄関の床の上でへばっていた。

「こんなとこで寝たら風邪引いちゃうよ;?
ほら、篤さん起きて。」


身体を何とか起こすが、幾ら鍛えてる郁でも同じように鍛えている屈強な男の体を起こすのは苦労する。
きっと今頃隣で同じような状態であろう小柄で華奢な麻子には、プラス長身の光を助け起こすなどまず無理だろう。


起こされた篤はトロンとした状態ではあるが何とか目を開いた。


「ん…郁…ただぃま…」


何時もはキリッと力の入った形の眉だが、今は眉間の力が抜けた状態らしく眉尻が下がっている。

その何時もとのギャップにちょっと可愛いなぁと思いながら、郁は篤の肩の下に自分の腕を回した。



「ほら、篤さん!ベッドに行きますよ?」


「ん…。」素直に返事を返した篤にまた(可愛い)と思いながらも、何とか寝室まで連れていくと篤をベッドに下ろした。

「今、お水持ってくるね?」

そのままベッドに倒れ込みそうな篤にそう言って立ち上がると、すかさず郁の細い腕に手が伸びた。


「篤さ…」


そして直ぐに唇にいつもより高めの温もりが重なった。

ドキッと胸を高鳴らせたのもつかの間、ふわりと香る酒の匂いに郁はやや顔をしかめた。


「もう、酔いすぎ!///
ほら、お水持ってくるから腕を…」


そう言って郁の腕を掴む篤の手を剥がそうと試みるが、また言いかけた唇を塞がれた。

先ほどは重ねるだけのものを一度だけだったが、今度は何度も何度も口づけ、その熱い唇はだんだんと郁の細い首へと下りて行く。


「あ、篤さんっ;!?///」



急な展開に甘い痺れを感じつつも、郁は慌てたように身を剥がそうとするが、流石特殊部隊にいるだけはある。
たとえ酔っていようが、郁の細腕ではその身体はびくともしない。


(もうこれ以上は…っ;!!///)

「あつ…「郁。」


ダメだと拒んで逃れようとした郁の言葉に被せて名を呼ぶ篤の声。
そして篤の熱い手に、暴れる郁のもう片方の腕も取り上げられた。

普段見れないトロンとした眼差しの篤が、それでもまっすぐに郁の焦げ茶色の瞳を捕らえる。


「今日はもう俺から離れるな。」
「はい。」


思わず即答してしまった郁に満足げに「よし。」と笑った篤が、再び行為を再開する。


(…ってあたしのバカ;!!!////)


そのまま郁のややなだらかな胸に顔を埋めた篤に我に返った郁が自分を責めたところでもう遅い。


夫婦のこの営みが嫌なわけではないが、この導入時がなんとも恥ずかしい。


ふと下へ目を向ければ、すりすりと自分の胸に顔を擦り付け「いく…」と甘く名を呼ぶいつもとは違った甘えん坊な篤の姿。


それにまた(可愛い…)と堪らす笑みを溢しながら、そっとその首に抱きつくと、途端に視界が回転した。
「わっ;」


突然のことに郁はギュッと目を瞑ってその首にしがみつく。


ドサッとベッドの上に押し倒された郁が恐る恐る目を開くと、目の前に篤のやはりトロンとした瞳。

その艶のある笑みに郁の身体が固くなった。


「篤さん…;?」


身の危険を感じつつ、名前を呼べば蕩けるような笑みを浮かべた篤が再び郁に幾つものキスを降らせる。

そして郁の耳元に吐息がかかるほど口を近づけ、低く艶のある声で囁いた。


「今夜は寝かすつもりはないからな。
…覚悟しろ。」
「!!???////」


顔を真っ赤に染め動くことも言葉を発することもできぬ郁が、起き上がってTシャツを脱ぎ去った篤を見上げる。

先ほどまで酒が入って眠たそうにしていたのは演技だったのだろうかと思うほどに艶やかに笑む篤。

(ってゆーかキャラ違いすぎだよっ;!!!!)

普段の真面目で誠実な姿は何処へ行ったのか?
郁は酒のもたらす力の怖さを思い知った。

(もう篤さん飲みすぎ禁止!!!(涙))


そんなことを妻が考えていることなどお構い無し。篤は再び郁の上にのし掛かりながら笑みを浮かべる。



(うぅ…でもカッコイイ///)


そうやって流されて行く郁の顔に篤は口づけを落としてゆく。




「明日は公休だったな。」


「Σ;!!!」



アルコールは危険な香り


酔った篤さんにはもう近づきません。





はい、強制終了ですね。
キャラ違うってもんじゃないです。
誰だよほんとにっていうぐらい酷いです。本当にありがとうございました。


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