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レッド寮の食堂で初めて会ってから一週間。どうやら苗字名前というGirlはとてもFriendlyな子らしく、俺を見掛けると必ず声を掛けてくれるし雑談をしたり一緒にレッド寮の食堂にLunchでも食べに行かないかと誘ってくれる。
そんなだからか、こちらも彼女を見れば声を掛けてしまうし、一緒に本校へ来たヨハン達やこちらに来てすぐに仲良くなった十代達よりも話している気がする。



「おーい、ジムー!」

午前の授業が終わり席を立った瞬間、前下方から声が掛かる。会って一週間しか経っていないのに覚えてしまったその声はやはり名前で、俺よりも教壇に近い位置で授業を聞いていた彼女はこちらを見上げながら(と言っても俺より幾分か小さい彼女はいつも俺を見上げながら話すのだが)手を振りこちらに小走りで向かってきた。

「Hey名前!どうしたんだい?」
「ジムは今日お昼何処で食べるか決まってるか?決まってなかったら私と購買にドローパンを買いに行かないか?」
「ドローパン?」
「おう、ドローパンだ!」

名前は「そうか、ジムはいつも食堂でご飯食べてたからな」と一人うんうんと頷きドローパンについて説明してくれた。……Lunchにすらデュエルのトレーニングを組み込むとは流石本校だなと関心してしまう。

「で、どうする?」
「楽しそうだ!是非食べてみたい」
「良かった!そうと決まれば早速購買に行こう!」



教室からゆっくり歩いても5分程で着く購買のあるHallには既にLunchやCard packを買いに来た学生で溢れ返っていた。そのHallの中央には大きなCartが置かれていた。名前に促されCartを覗き込めば不透明な掌大の包みが大量にが入っていた。なるほど、これがドローパンか。
「大当たりがあってな!黄金のたまごパンっていうのが一日1個あるんだ!」と笑いながら名前がCartの中から包みを1つ取り「トメさん!ドローパン1つー!!」とレジに向かっていった。
待たせてはいけないと改めてCartの中を見て1つを掴みレジに向かい会計を済ませるとHall奥から「ジムー!こっちだぞー!」と名前が手を振っている。

「何が当たるかなー!」
「さっき言ってた大当たりが出るといいな」

名前と包みを同時に開けぱくりと一口。瞬間、思わず眉間に皺が寄る。

「黄金のたまごパンじゃなかったー!!ジムはなんだっ……ジム?どうした?」

こちらを向いた名前が心配そうに声をかける。しかし何か言葉を返さなければとは思うのだが口の中のパンを飲み込めない。
そんな俺を困ったような顔で見ていた名前がふと俺の持っているパンを見て声を落とし俺に尋ねる。

「もしかしてジム、チョコ嫌いか?」
「……That's right」

やっとパンを飲み込み答えると名前は「そうかー…初っ端からハズレちゃったな」と頬を掻いた。こちらも思わず苦笑する。
どうやってこのパンを食べきるかと悩んでいると名前が「ジムはトマトは食べられるか?」と聞いてきた。

「あぁ、Tomatoは好きだ」
「じゃあ私のと交換しないか?」

「一口食べちゃったので良ければ、だけど」と続ける彼女に思わず「いいのか?」と聞くと「私チョコ好きだからな!大丈夫だぞ!」と胸を張られる。そういう意味では無かったのだが、本人が大丈夫だと言っているしこのパンを全部食べるのと名前のパンと交換してもらうのを天秤にかけ、ほぼ即決でその申し出を受けた。

「にしてもジムも嫌いな食べ物あるんだな」

「何でも食べそうなイメージがあったんだけどな」と笑う名前に「そんなことはない、嫌いなものは結構多いんだ」と言えば「そうなのか?!」と驚かれる。

「甘すぎるものと、辛いもの、あと惣菜なんかも嫌いだな」
「ホントに多いんだな」
「HAHAHA、だろう?」

へーと声を漏らしながら交換したショコラパンを頬張る名前に興味本位で「名前は嫌いなFoodは無いのか?」と聞くと、彼女はビクリと肩を揺らしてギギギと音がしそうな程ゆっくりとした動作でこちらを向いた。

「……嫌いな食べ物か」
「別に言いたくなければ言わなくていいんだが…」
「いや、私も聞いたからな、ジムには聞く権利がある」

神妙な顔でそんな風に言われ思わず苦笑する。どうやら彼女は変なところが律儀だ。
「ただし、笑わないでほしい」と念を押され「そんなことはしない」と言えば彼女は頷き耳を貸してくれと小さく手招きをする。体を傾け頭を名前の顔に寄せると名前は神妙な顔のまま俺に耳打ちする。

「実はな…人参が、食べられないんだ」

言われてからたっぷり5秒程固まって思わず「……Carrot?」と聞き返してしまった。
「そう、人参。キャロット」と答える名前。どうやら聞き間違えではなかったらしい。
だがそれならばさっき念を押された笑わないでほしいという言葉が分からない。Carrotといえば嫌いな人が中々多いものではなかったか。
思案を巡らせていると名前は「やっぱり子供っぽいか…でもどうしてもあの独特の甘みと食感がダメでな……」と何故か拳を握り悔しそうな顔をした。しかし、なるほど。そういうことか。

「いいじゃないか、俺なんかよりうんと少ないし俺達なんかよりずっと年上でもCarrotが嫌いな奴なんていっぱいいる。そんなに気にすることじゃない」
「そ、そうか……?」
「あぁ!」

そう答えれば「そっか」と少し安心したような顔を見せた。俺は「それに」と付け足す。

「名前がCarrotが食べられないなら俺が代わりに食べればいい」

「さっき名前に俺がしてもらったみたいに」と笑えば名前も「じゃあジムの嫌いなものは私が代わりに食べれば万事オーケーだな!!」と笑った。

「ジムの嫌いなものは私が食べて、私の嫌いなものはジムが食べる。約束だな!指切りしなきゃな!」
「指切り?」
「おう、指切り!」

「約束を守るぞーってしるしというか、誓いというか…まぁそんなんだ!」と拳を握り小指だけを立て説明する名前に「Pinky swearか?」と聞けば名前は「外国にも指切りってあるのか?!」と目を丸くした。

「知ってるなら話は早いな!ほら、小指出して小指!」

お互いの小指を絡め名前は「ゆーび切った」と拳を小さく揺らすとこちらを見て「約束な!」とにこりと笑った。こちらも釣られて笑う。
Pinky swearなんてElementary school以来だが、悪くない。


「ところで日本だと指切りの脅し文句?は嘘ついたら針千本飲ーます!だけど、ジムのところもそういうのあるのか?」
「俺のところは目に針刺すだな」
「ひえぇ!そっちも痛そう!!」



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