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留学してすぐ、同じく留学生のヨハン経由で仲良くなった十代に会う為に俺はカレンと共にレッド寮の十代の部屋の前にいた。しかしドアを軽くノックして声を掛けるが返事はない。というか人のいる気配すらない。
首を傾げ何処かに出掛けているのだろうかと思案を巡らせる。事前にAppointmentを取っておくべきだったかと息を吐くが居ないものは仕方が無い。
自分の寮へ帰ろうと踵を返し階段を降りた辺りでそういえば食堂の方を見ていないなと足を止めた。どうせ暇なのだ、食堂を覗くくらいの寄り道苦ではない。

食堂の前まで来ると壁が薄いのか中からカタカタと音が聞こえた。上手く聞き取れないが人の声もする。

「Hey!十代はいるか?」

引き戸を勢いよく開ければ中に居たのは1人だけ。食堂中央、オベリスクブルーの制服を着た少女がビクリと肩を揺らしこちらに振り向いた。その手には何故かねこじゃらしが握られている。

「……」
「s…sorry、驚かせるつもりは無かったんだ」

無言で大きな目を丸くさせこちらを見ながらパチパチと瞬きをする彼女にいたたまれず謝れば、彼女は更に2、3回瞬きをしてから「……あぁ、」と口を開いた。今度はこちらの肩が跳ねる。

「十代ならいないぞ」
「……」

さっきとは逆に、こっちが彼女を凝視してしまった。
言われた言葉を脳内でもう一度再生する。その結果どうやらそれは自分が入ってきた時に言った言葉への返答だと気付いた。
黙ったままの俺に彼女は「十代は筆記の成績が進級ラインギリギリ過ぎてな、補習をくらってる。アカデミアの方だ」と更に情報をくれ、慌ててお礼を言えば「別にいいぞ」と返された。大きな目はまだこちらをジッと見ている。

「留学生の、えぇと、クックさん、だったか?」

首を傾げながら言われた呼ばれなれない呼称に「ジムでいい」と返せば「じむ」とやや頼りない発音で復唱された。……発音については置いておき「なんだい?」と聞けば彼女は口を開き「ジムはすぐに十代のところに行くか?もし時間に余裕があるなら少し喋らないか」と、言った。


「始業式の日から気になってたんだ、私はジム、あなたと話してみたい」





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