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日が傾き始めてきて空が赤みを増していく木曜17時。
1人で食べるには少しばかり数の多いドローパンが入った紙袋を抱えぱたぱたと岸壁に続く道を駆けていく。確証は無いが多分彼はあそこにいるだろうと当たりをつけて。

「おー名前!!」
「やぁ十代」

道の反対側から歩いてきた十代に声を掛けられ思わず速度を緩め十代の前で立ち止まった。
「どうしたんだよそんなに急いで」と聞く十代に「ジムを探しているんだ」と言えば十代はあぁと一言、にっかりという効果音が付きそうな程良い笑顔で「ジムなら岸壁の方にいたぞ」と教えてくれた。
自分の予想が当たっていたことに心の中でガッツポーズをしつつ紙袋からドローパンを1つ取り出し十代に渡す。

「おっ!サンキュー!」
「こっちこそ教えてくれてありがとう」

軽く手を振り合い十代と別れまた岸壁に向けて走り出す。後ろから「ハンバーグだ!」と声が聞こえた気がした。


岸壁に着くと、カンッカンッと硬いものがぶつかる音がした。海岸へのつづら坂を降りながら音の出所を探せば大きな岩の上に見慣れた背中が見える。

「ジム!!」

駆け寄りながら大声で呼べばビクリと肩が揺れ青色の隻眼がこちらを向いた。

「Hey名前!」

私を確認するとジムは先程の十代とはまた違った笑顔を向けてくれる。見た目より少し幼さを感じるがとても爽やかな笑顔だ。
ジムの前まで辿り着くとジムと一緒に彼のfamily(それかFriend。どっちだかは未だに分からない)のカレンが「がう」と出迎えてくれたので「やぁカレンさん」と挨拶をする。

「What happened?」
「あぁちょっとね」
「?」

首を傾げたジムが私の抱えている紙袋に気付いたらしく「それはなんだい?」と覗き込んできた。
「トメさんの手伝いをしたらいっぱい貰ったんだ。1人じゃ食べきれないからジム達と食べようと思ってな」
ちゃんとカレンさんの分もあるぞ!と紙袋から魚肉ソーセージを取り出しドヤッと掲げるとジムは何故か片手で口を押さえ肩を震わせクククッと押し殺せていない笑い声を上げた。
「どうしたんだ?」と首を傾げればまだ肩を震わせながら「いや、何でもない」と返された。何でもないようには見えないんだが。
少しムッとして「いらないのか?」と問えばジムは「sorry」と言いふぅと息を吐いた。

はい、と紙袋からドローパンを1つ取り出しジムに渡してからその場に座り込み、横に置いた紙袋から自分の分のドローパンを取り出し包みを開き一口。うん、中身おにぎりだこれ。
もぐもぐと主食の塊のようなパンを頬張りながらふと隣を見ればいつの間にか私の隣に座っていたジムも同じようにドローパンを口へ運んでいた。なんとなくその様子をパンを食みながら見ているとジムと目が合った。
ジムは隻眼を細めながらニコリと笑う。それを見ながら綺麗に笑う人だよなぁとしみじみ思ったのは内緒だ。

「thanks名前」
「おう、お礼はデュエルでいいぞ」

そんな笑顔で発せられたお礼の言葉にそう返せば笑顔が変わる。今度はちょっと子供っぽい、無邪気な笑顔。HAHAHAと笑い声付きだ。
そんなジムに釣られたのか気付けば私も笑っていて、ふふっと声が漏れる。

「OK、ならさっさと食い終えなきゃな」
「そうだな暗くなる前に」

だいぶ日が傾き青紫色になった空を見ながら言う。日が落ちるのは、早い。




そんな日常。




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