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「おはよう名前!」
「………」
「早く着替えて出掛けようぜー!!」
「…………なんでいるんですか」

全校集会の次の日の朝。朝というか早朝。つーか5時。
寝ていたのに叩き起こされた私の自室にヨハン・アンデルセンがいる。何故。

「そりゃあ俺達はパートナーだからな!」
「そんな事聞いてるんじゃありません。な ん で いるんですかと聞いているんですよ、鍵掛かってたでしょう」

そう、部屋の扉には鍵が掛かっていた筈なのに、と眉間にシワを寄せれば「あぁ、ルビーとゴブリンゾンビに頼んで開けてもらった」とからからと笑いながら言われる。いや笑い事じゃない。
怒ろうとした私にヨハンは「それより早く起きて授業前にどっか行こうぜ」とにっこりと微笑み毒気を抜かれ怒る気も失せる。
ハァとため息を吐き「……分かりましたよ」とのそのそベッドから這い出る。着替えようと寝間着にしている黒いタンクトップの裾に手を掛けた辺りでヨハンがニコニコしたままこちらを見ている事に気付く。

「……着替えるんで出てってもらえません?」
「どうして?」

どうしても何もないだろうがと片手で頭を抱えつつも「他にも身支度あるんでいいから食堂ででも待っててください」と言えば「しょうがないなぁ」と渋々といった感じで部屋から出て行く。しょうがないじゃないですよしょうがないじゃ。

いつものレッド制服に着替え、デッキをデッキケースに入れ懐に仕舞う。洗面台での身支度も終え食堂に行けばヨハンはシャケの切り身を口に放り込みながら「先食ってるぜ名前ー」と笑う。
「ブルー寮でご飯食べてこなかったんですか」と聞きながら自分の分の朝食を取りに行けば「軽く食べてきたんだけどレッド寮の飯美味しそうだったから」と返ってきた。あぁそうですか…と朝食の乗ったお盆を持ちながらヨハンの向かいに座れば「俺ブルー寮の飯よりレッド寮の飯の方が好きだなー。こう、純和食!って感じで」と白米をぱくりと一口。というか日本語といい箸の使い方といいホントにこの人外国の人なんですか。

「まぁ私もブルー寮のご飯よりレッド寮のご飯の方が好きですね。ブルー寮のご飯は豪華過ぎて食べてる気がしないんですよ」
「分かる!さっきめちゃくちゃ驚いた!!……って名前はブルー寮で飯食ったことあんのか?」

「あそこはここみたいに他の寮のやつは飯食えないんじゃ」と首を傾げるヨハンに「そもそもここだって普通は他の寮の人は食べに来ない筈なんですよ…」とため息を吐く。

「去年の始業式から2日くらいブルーに居たんですよ。ただ合わなかったんで2日でレッドに戻ったんですが」
「確かにここ居心地良いよな!」

「昨日ちょろっと来ただけだけど気に入っちまったぜ」と笑うヨハンにホントよく笑う人だなと思いながら「そうですね、私は好きですよ、この寮」と返し白米を口に運んだ。

「だよなー。俺も好きだぜ!こっちの寮に入りたかったぜ」
「留学生をこっちに入れるわけないでしょう、一応ここ落ちこぼれ寮扱いなんですよ」
「それが不思議なんだよな!」

「こんな良いとこなのに」とむくれるヨハンに少し驚く。

「……そんな顔もするんですね」
「ん?何が?」
「なんでもありません」

それはそうだ。会ったの自体昨日が初めてなんだ。私はこの人の事を何も知らない。
きゅうりの浅漬けを口に含みながら目だけでヨハンを見る。ヨハンは私の視線に気付いたのか「ん?」と首を傾げたので慌てて目を逸らす。


……まぁ、なんだ。折角組んだタッグなんだし、少しだけ楽しんでみようかなと思ったのは内緒だ。





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