『溺れる青』


「櫂く〜ん」

アイチが耳元で俺を呼んでいる。

その頬は酒気を帯び、綺麗な赤に染まっていた。たまに酒を飲ませるとすぐこれだ。
アイチは酒癖が悪い。絡み酒ってやつだ。しかもすぐに酔いが回る。
だから外で飲まないよう、俺と一緒に飲むことをきちんと言いくるめてあるが、今日もそれは決して例外ではなく、ここはアイチと俺が半同棲している部屋だし、ここには二人しかいない。
心が狭い自覚はあるが、こんなアイチは他にはとてもじゃないが見せれない。勿体なくて。

「櫂くーん……」
「、悪い、なんだ」
「櫂くん、呼んでも返事、してくれない、から……」
「悪い」
「んーん、いいのだいじょぶー」

泣きそうな顔を一変させると、へらりと締まりのない顔をするアイチに俺はつい微笑んでしまう。

「櫂くんがわらったー」
「……駄目か?」
「んー?だめじゃないよー」


アイチはかわいい。それは普段から言えることだが、酒が入ると隠さず甘えてくれる。それが嬉しい。でも酒に頼らないと中々甘えてくれない。それが少し悲しい。
数年前なら考えもつかないような感情に、今では心地良ささえ感じる。


「そんなことよりさ、ちゅーしよ?ちゅー」
「……」

だが、こんな爆弾発言を酔っているときにされると非常に困る。
このまま襲ってしまいたくなる。だが、俺はアイチを大事にしてやりたい。どうせ襲うなら意識のある時に、だ。

「かいくん、ちゅー、しないの……?」
「……今は駄目だ」

目の潤むアイチから目を反らし、彼が置いた観葉植物を見つめてみる。そのまま答えれば服をぎゅうっと掴まれた。見えないが、アイチは上目づかいで俺のことを見据えているだろう。
理性との戦いに早くも敗北しそうだ。

「やだ、かいくん…ちゅうー……」
「駄目だ、酔いが覚めてからならしてやるから」
「やだー……」
「はぁ……」


泣きそうなアイチの声に、一回だけ、一回だけ。そんな風に心の中で復唱しながらアイチに向き合うと、すでにアイチは目をつむっていた。その白い瞼と赤い頬に欲が疼いたが、理性で押さえ付ける。
そのままゆっくりと顔を近付けるとアイチの酒くささを帯びた呼気が俺の肌をくすぐる。

「ん……」

重ねただけのそれにアイチが吐息を漏らす。俺は名残惜しくなって、音をわざと立ててから小さい唇を舐めて顔を離した。酒臭い。
そうすると、俺の好きな青い瞳は静かにその姿を見せる。

溺れている。その青に俺は。
だがその青は薄い膜を張り、俺と違うものに溺れている。

その事実に静かに嫉妬すると、俺はアイチを勢いよく床に押し倒した。




大変お待たせいたしました
タマさまリクエストの『酒ネタの続き』だったはずの物です
すいません、続いてないですよね……
ただアイチがちゅーちゅー言って櫂くんに絡んでるだけですよねすいません
しかも元の小説の数年後っていう設定を生かせてないし……/(^o^)\
うう……書き直しいつまでも受け付けます
1000hit企画ご参加ありがとうございました!

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