『手で触れて』


「櫂くんの手、大きいね」

そう言って自然と手に触れてくるアイチ。
誰が見ても恋人同士のそれにしか見えないというのに、これで無自覚なのだからやっかいなやつだ。


「…普通だ」
「そんなことないよ?ほら」

平静を装ってアイチに言うが、こちらの心中を知らない彼は、俺の指を広げて、自分の手と合わせる。

心拍数が上がっていく。これからしばらく続くだろうこれにちゃんと我慢できるだろうか。

「…ね?」
「……アイチより大きいだけだ」
「そうかな……」

確かに、アイチより俺の手は一回りも大きかった。
それでも、発展途上のお前より手の大きいやつはいくらでもいるから気にするな、そう心の中でフォローする。
それから俺の言葉に納得したような、していないような微妙な顔で声を発したアイチ。


「でも櫂くんみたいな手になりたいなぁ、僕」
「…なぜ」
「う、……カッコいいから、かな?」

無邪気にはにかむアイチに我慢できなくなって、合わせている手と反対の手でさらさらした髪と一緒に頭を撫でてやる。

この細い毛の一本一本でさえも、俺の物にしてしまいたい。
でも、きっと俺にそんなことはできない。

代わりに、合わせたままの手をきつく握って、それから無防備なアイチの額に自分の額をくっつけてやる。

「……俺は好きだけどな」
「え……」
「アイチの手」

優しくて、あったかくて

目さえもくっつきそうな距離でそうささやいてやれば、目を白黒させたかと思うと、アイチは見るまに顔を赤くして口をぱくぱく言わせながら俺の向こうを見ていた。


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おまたせしました
皐夢羅さまリクエストの『手の大きさ比べをするor指輪を交換する櫂アイ』です
素敵なリクエストにどっちにするか悩んだんですが、管理人の趣味で手の大きさ比べをセレクトさせていただきました
指輪交換の話は落ち着いたら書いてみたいなぁ……
10000企画参加、並びにリクエストありがとうございました!


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