バカ担当、中西草太
奴はいつも唐突である。
それは今日も今日とて同じなのだ。
例えば、幼なじみの亮と平和にポッキーを食べている休み時間に突然その嵐はやってくる。
バン、と教室のドアが開いて、文化祭実行委員になったそいつはあたしたち二人に言った。
「お前ヒーローお前ヒロイン俺監督!ラブストーリー!今年の文化祭決定!」
幼なじみの1人であるバカ草太だ。
「クラスの他の子から野次飛ばされてくたばれ」
「とりあえず、焼却炉いってこい」
「ひでえ!」
「ってか、模擬店とってくるはずじゃ…ふごっ」
「唯!しっ!」
バカは慌てた様子であたしの口を手で塞いだ。キモインデスケドー。
キモイバカはあたしと亮に向かって小声で「あんね、実はじゃんけん負けて劇になっちゃった。えへ」と。あはは。なるほど、それであたしと亮が主演で劇。皆に頼めないから。あらー……って。
あたしの口をふさいでいる草太の手をおもいっきり噛んでやる。
「ッー!噛むなよ!!」
「ふざけんな!つーか、えへとか可愛くねえ!キモイ!」
「おーい、みんなー。おバカな文化祭実行委員がよりにもよって劇ひいてきたぞー。」
「「「ナァァアアアニィィィイイ!?」」」
亮のちくりに、一斉に草太に飛び掛かったなかなかにガタイのいいクラスメイツ。女子たちも暴言を放っている。プチ戦争である。
何てったって焼肉がかかっているもんな。肉!
よしよし、もっとやれ。
バカにイニシアチブなんて取られてみろ。あたしと亮の臭いラブストーリーになるぞ。
草太は最終的に制服を脱がされ、あらまあな姿になってしまった。雷神様、もといクラスメート様の怒りはすこしおさまったようである。
「ゆいー、りょうー…助けてぇぇえ!俺に…このクラスに平和をぉぉぉお」
草太は涙目である。
平和。つまりはこのクラスが焼肉に辿り着けばいいわけか。ほうほう…ふむふむ!あたしだって焼肉食べたい!ただ肉!家で食べたら兄貴にどんどん食べられるもん。
あたしは亮と目を合わせてた。向こうも同じことを考えているらしい。にやり。
「「しかたない(ねえ)なぁ」」
あたしたちのにやりを草太は見ていなかった。
草太はキラキラした目で「やっぱ持つべきものは頼りになる幼なじみだな!」と言っていた。あたしと亮からすれば、「やっぱ持つべきものはバカな幼なじみだな!」である。
バカ担当、中西草太
文化祭で草太は1人で女装ショーをしました。
「なんで俺がこんなことにぃぃいい!」
「あははははは、草太!にあ、似合ってる!腹いてー」
「唯!笑うなぁ!亮もそんな目で俺をみるなぁぁああああ」