不幸を吐き出した女神





夢だと思っとったんや。
夢だからいいや、と思った。


丁度、彼女と喧嘩した日やった。
なんだかよく思い出せんけど、ひどい言葉を言ったんを覚えとる。
――あーあ、またやってしもた。また謝らなな。
こんな反省と後悔を何回もしてきた。





「声、視力、聴力、1つだけ失うなら、あなたはどれがいいですか?」

笑顔の女神が夢で俺に聞いてきた。

「そやなあ。あいつにいらんことばっか言うから声かなあ。」

それにな、あいつの笑顔が見れんくなるんも、あいつの柔らかい声が聞こえんくなるんも、堪えれんし。
俺は自嘲気味にそう言った。

「向こうも同じように思っていたとしても?」

よく見るとその女神の笑顔は張り付けたような冷たいものだった。

は?何ゆうてんの?

そう尋ねようとしたら、あいつが俺の名前を呼ぶ声がして、やっと夢から醒めた。












「…ばか、心配し…た…」

なんで、泣いとんや?
あ、ここ病院か。なんや俺、事故ったんか。
あかんなー。最近、泣かせてばっかや。
喧嘩した時に言った事も謝らなな。


(ごめんな)

「なに?聞こえない」

(ごめんな)

空気の振動がない。声が出せない。
喉に痛みなんてないのに。

さっきの夢を思い出した。
「そやなあ。あいつにいらんことばっか言うから声かなあ。」
あの張り付いたような冷たい笑顔。
あれはほんまに女神やったんやろか。






「………声出せないの?」


あいつの顔がどんどん歪んでいく。
そんな顔せんといて。大丈夫やから。
それさえも伝えれない。




不幸を吐き出した女神




いらんこと言うんもこの口やったけど、大事なことを伝えるんもこの声やったのに。




BGM/ハローグッバイ






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