さん






少女がそらに還り、少女の娘が母親になりしばらくしたころに、ある老人が娘の前に現れました。話を聞けばあの少年ではありませんか。ながい間、事情があり帰れなかったのです。

娘は託された手紙を渡します。もう古びて茶色くなった手紙を少年は大切に受け取りました。読んだ少年は涙を流しました。せかいでいちばんきれいな涙でした。


娘は紅茶を入れるため、キッチンへいき、そこには少年とその娘の娘のニ人になりました。
あの少女の孫なのです。
血はつながっていないけれど、いちばんいちばん大切な人の孫なのです。
なんともいえない感情に少年はとらわれました。しずかに心がふるえ、少年はことばにできないことをもどかしく思い、またそれがいとおしいとも思いました。



ねえねえ、おじいさん

なんだい?

おじいさんはてんごくにいくとしたらなにをもっていく?

お嬢ちゃんはなにを持っていくんだい?

わたしはね、ママからもらったぬいぐるみ!

そうかい、大切にしなければいけないね

うん、おじいさんは?

そうだねえ、花束を持っていこうかな

だれかにあげるの?

そうだよ

おじいさんのおよめさん?

違うよ、けれどいちばん大切な人さ




少年は少女に花束を渡すことを思い、とてもとてもしあわせそうに笑いました




おわり








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