またいつかどこかで





霧が濃い。真っ白な世界だ。
ある一点をじいっと見つめていると、ぼんやりと影がこっちに近付いてくるのが見えた。
近くにいるのに顔は見えない。ただ背格好が私とよく似た女の子がそこにいる。

「私が案内人です。はじめまして、0.5さん。」

さっき、私の人生は終わったばっかりだというのに。
はじめまして、がやってくるなんてなんだか不思議だ。


「終わってないですよ。」

私のことを0.5と呼んだ案内人が言った。きっと天国か地獄に連れて行ってくれるのだろう。

「どういうこと?」
「まだ貴女は死んでません。」
「じゃあ、貴女は私をどこに案内するの?」
「それはまだ決まってません。」
「…変なの」
「0.5さんはどうやってこちらに来たのですか?」
「自殺よ、首を吊ってね」
「ほう…では、あちらに戻らくても構いませんか?」
「……そのつもりで死んだからね」

その案内人は、うーん、と悩ましげなうめき声を出した。何かを決めかねているようだ。

「ではあちらに1つだけ残すとしたら何にしますか?」

澄んだその声が響いた。

「…なにも。だって残して受けとってくれる人がいないもの。」

だって独りぼっちだったから。
家に母親と父親がいても、寂しくて寂しくて、それで悲しくて。
あの人たちは、私が死んだってきっと気付いてない。


「いないなんて嘘です。」
「ほんとよ」
「なら、貴方がまだ完全に死んでないのは何故ですか?」
「知らないわ」
「貴方の母親が見つけたから」
「嘘だ」
「本当です。今も貴方のことを思って泣き叫んでます。」


なんでそんなことを言うの。
私は決心してここに来たのに。

「……愛されたかったの」
「知ってます」
「気付いて欲しかったの」
「わかってます」
「本当は戻りたいの」
「私もそう思います」
「案内してくれる?」
「勿論です」

案内人は私に手を伸ばした。
その手を掴む。その手はなんだか懐かしくてよく知っている温かさを持っていた。


「ねえ、」
案内人に呼びかける。

「なんでしょう?」
「貴女の名前は?」
「そうそう、申し遅れました。私は0.5です。」
「私の同じ名前なのね?」
「足したら1になります。」
「本当ね」
「もう1つ言い忘れてました」

案内人0.5は私の方を振り返った。

「貴女と私は1つなんですよ」

いつも隣にいます、私の半分がそういって微笑んだ。



またいつかどこかで



最期のその日に会いましょう




BGM/カロン






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