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atro-ala

novel>PH>安全装置



 ほんとうに、いったいなにを考えているのだろう。ほうと眠りからゆるや かに引き上げられて間もなく、先に起きていた彼が、唐突に、爪を切らせろ と言い出したのだ。多少寝ぼけていたわたしは、なんの疑問も持たずただ頷 いてしまったのだが、彼に手を預けてから十分、ようやく働き出した頭がこ れはいったいどういうことだと考え始める。
 「あの」
 レイムさん。そうすこし身じろいで名を呼べば、動くんじゃあないと手を 固定された。服くらい着させてくれたっていいじゃあないかと思わず唇をと がらせて、肌寒さに布団を肩まで引き上げる。ぱち、ぱちと爪が自分と断た れていく音が、時を刻む針の音と混ざり奇妙なリズムを生み出しているの に、わたしははあと大きくため息をついた。つまらない、実につまらない。
 「べつに、いま、しなくてもいいじゃあないですか」
 ため息のついでというように出たあくびを噛み殺しながらそう不平をたれ ると、ああそうだ、だがいつにしたっておまえはそうやって逃げるだろう が。そんなぐうの音も出なくなることをぴしゃりと言ってくるものだから、 わたしは頭まで布団に潜り込んで、逃げませんよお、と間の伸びた声を出し てみせた。
 「だいたい、なにを突然切ろうと思ったんです」
 はいはいと軽く流され、沈黙が落ちかけたのに言葉を継げば、よどみなく 働いていた彼の手が、わずかに止まる気配がした。ちろりと布団から目を出 して彼の気色をうかがうと、すっとその琥珀の双眸が逸らされる。
(ははあ、これは)
 なにかあるのか。にやりとわらったのが伝わったのだろう、彼はうんざり とした視線をこちらによこす。それが恋人に向ける目か、とよっぽど言って やりたくなったが、それよりも格好の獲物があるのだからと今は見逃すこと にした。
 「……言えないようなことなんですか?」
 たかが爪にそんなことがあるのかと思いながら起き上がり、意地のわるい 声でほじくってやると、歯噛みした彼はすこし頬をあかくして、さあなとは ぐらかす。その手はいつのまにやらやすりを使っていて、そこまでしなくて もという言葉は彼の切り返しに遮られるのだ。
 「……少なくとも、思い立ったのはおまえのせいだ」
 ぼそり、そうつぶやいた彼に、わたしのせい、と一瞬の間を置いて昨夜が 脳裏を駆け巡った。ああ、そういえば、昨日、わたしは。
 (そういうことか)
 ちらと眼を上げた彼が、わたしの顔を捉えてその口許を緩ませる。腹立ち まぎれに傍にあった枕で傷だらけであろう彼の背をなぐっても、頬にじわり とにじむ熱は止められそうになかった。

安全措置 (その痛みも、しあわせといえば、しあわせなのだけれど)



鴉月璃兎様への相互記念でした! もうまったくほんとうに遅くなってし まってすみません……なんど言っても申し訳なくて´・ω・`そして爪切り レイブレですが、前は足だったので今回は普通に手の爪をレイムさんに切っ ていただいたら勝手にいちゃいちゃしはじめてしまいました← 背中の引っ かき傷って浪漫だとおもうのです´///`お気に召していただければさいわい です……! 相互、ほんとうにありがとうございます! これからもよろしくお願いしま す^///^



Mr.home』のゆべさんより相互記念いただいて参りました!
爪切りだとか意味不明なリクエストをこんなにも綺麗に、鴉月には無理な話です。鴉月が相互記念で送り付けたものの続きを意識して下さったそうで……妄想が大変ですね、回線いっぱいでログアウト寸前です(笑)
背中の引っ掻き傷は鴉月も浪漫だと思います、いやだわ素敵。
ゆべさん、相互と素敵な作品とを有難う御座います!これからもよろしくお願いします。


20111206










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