御題 | ナノ
atro-ala

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「さっむ、なに今日寒過ぎだろ…!」
「だっから防寒具つけてこいって毎日毎日言ってんだろうがダァホ」

はぁ、吐き出す息が白く色付いて、すぐに周りに溶け込む。白くて細くてボールを扱うが故に浮いた筋の目立つ手に、伊月は息を吐きかけた。
伊月は基本的に少々面倒臭がりな節がある。やりだしたらとことん生真面目にきっちりこつこつと、なのだが、やりだすまでに時間がかかってしまうのだ。例えばそう、箪笥から出すのが面倒で防寒着を着てこないだとか。着たら着たで直すのが面倒だからと春先までつけてそうだが、風邪をひかれるよりよっぽどいい。

「早く行こうひゅーが、コガにカイロ借りたい」

にこやかに言っているが小金井には大迷惑であろう台詞に、日向はマフラーに埋もれた口元を僅かに笑みに変えた。しかしまたすぐ怒ったような顔を作ってマフラーを外すと、それを伊月の首に巻いてやる。

「ひゅーが?」
「学校つくまでしてろ。風邪ひかれたら面倒だ」

灰色のマフラーにもふもふと埋もれる伊月に笑みが溢れそうになるが、なんとか捩じ伏せて怒った風を装い続けた。
明日はちゃんとしてくるから、怒んないで……ねぇ、ひゅーがってば。
つかつかと歩みを早めて伊月には見られないように、俺は怒ってなきゃならないんだから。
そんなことを、笑いながら思っていた、寒い日の朝。


惚れた弱味ってやつですか
(マフラー、ありがとう)

20120223







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