読んでいた本を、ばさりと落とした。
すぐ隣を通り過ぎていった男性が怪訝な顔をしてボクを見たけれど、そんなの今のボクにはどうでもよくて。
「……青峰、くん」
少し先に、彼がいた。
背が高くて、肌が黒くて、バスケが大好きな、彼。
黒子は暫くの間、そこから動けずに青峰を見つめていた。それなりの人混みのなかを歩く、青峰と知らない人。後ろ姿で表情までは見えないが、けれど一緒にいる知らない人は、笑っている。綺麗な明るい色の髪を風に揺らして、青峰の腕に抱きついて。
「…青峰くん」
ボクのものでなくなった彼
(かつて彼の隣にいたボクも)
(あんな風に笑っていたのだろうか)
201200225