御題 | ナノ
atro-ala

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あ、日向だ。
面白くもなんともない授業中、ふと窓の外に目をやった俺は、そこに日向の姿を見つけた。寒そうにジャージのジッパーを一番上まで上げて、いかにもやる気無さげにポケットに手を突っ込んだままグランドを縦横無尽に走り回るボールを目だけで追っ掛けている。
そうか、ボール見てればやってるように見えるんだ。
と、俺はあまりよろしくないことで感心した。そういえば俺のクラスも明日からサッカーだし、去年の二の舞は御免だと密かに決心する。
去年の二の舞というのは、体育の成績が頭ひとつ分低かった俺の汚点。確かあのときもサッカーだったか、真面目に取り組んでなかったとかいう理由で下げられたことがあった。

「(あれは本当に、殴ってやろうかと思ったな…)」

誰が不真面目だ、と今でも思い出すだけで少し苛々する。だが改めて今思うと、イーグルアイがあるからボールなんか見てなかった気がした。寒くて動きたくなかったから、攻守交代の時だけ当たり障りのないように移動してた、気もする。

「(そっか、なるほど。……あ、日向が)」

ボール持った。
流石に手を出して、ドリブルで進める。それからゴール前へパスを出して、そこにいたサッカー部で見掛けたことのある生徒へ、そしてまた日向に渡して、キーパーを欺いて見事なシュートを決めた。日向とサッカー部の生徒がハイタッチする。

「(やったね、日向)」

窓の外の彼に小さな声援を送って、俺は黒板に目を戻した。いつの間にかかなりの量が書き進められていて、げんなりしながらノートを埋める。部活の時になんて言ってやろうかな、そんなことを思って、はたと気付いた。

「(……俺、なんでこんな真面目に、日向なんか見てたんだろ?)」

教卓で教師が“恋い慕う”の意味を解説するのを、俺は聞かぬふりをした。


恋のはじまり
(見なくてもいい筈なのに)
(いつの間にか目が追っ掛けてた)


20111127







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