短編 | ナノ
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アウトオブマイワールド


カンカンカンカン。

赤いライトが、ちかちか、点滅を繰り返す。
黄色と黒色のバーがゆっくり降りてくる。
そこで一つの道は、一時的にしろ強制的にぷっつりと切られる。車も自転車も人も兎に角みんな足を止めて、ケータイをいじり出したり誰かと話し出したり音楽に集中したりする。
まるで、そう、外にいるのに自分の世界に入ったような。自分と外の世界を遮断してしまったような。
そんな時間が、伊月は好きだったりする。

今日も今日とて、また遮断されてしまった。
日向のまたかよという愚痴を聞いて小さく笑みを溢しながら、ポケットからケータイを出して受信メールを確認する。自分の世界に、入る。
受信のフォルダにメールは三件だった。そのうち二件は朝読み忘れた星座占いと月バスの発売日を知らせるマガジン。残り一件は、昨晩寝落ちて読んでいなかった日向からのおやすみメール。
そのメールを見た途端に昨日のメールのやり取りを思い出してくすりと笑うと、なんだよ、と日向が機嫌の悪そうな声をかけてきた。なんでもない、と返せば、ムカつく、と何に嫉妬しているのやら輪をかけてムスッとするものだから、それがまたおかしい。くすくすとまた笑うと日向は伊月の手をガッと掴んで、お前は俺のだからな、だなんて言ってきた。

カンカンカンカン。

赤いライトが、ちかちか、点滅を繰り返す。
黄色と黒色のバーが降りている。
そこで一つの道は、一時的にしろ強制的にぷっつりと切られる。車も自転車も人も兎に角みんな足を止めて、ケータイをいじり出したり誰かと話し出したり音楽に集中したりする。
まるで、そう、外にいるのに自分の世界に入ったような。自分と外の世界を遮断してしまったような。

なのに日向は、そんなこと関係なく伊月を引っ張り出して自分の横へそっと導いてくれるのだ。

周りはみんな自分の世界。なのに伊月は、日向の世界にいる。
アブノーマルなのに手を繋いでいてもおかしくなくなる、そんな遮断された世界が伊月は好きだった。だって堂々と、彼の隣を歩けるのだから。


アウトオブマイワールド


20121011








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