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memo

* 夜久衛輔 × リンゴ飴 *

「んー……」

夏祭り。
赤い提灯や賑わう声にすぐ溶け込めるように2人揃って浴衣を着て出掛けたのだが、私の隣から漂ってくるのはイカ焼きの香ばしい匂いと何とも難しそうな音だった。

これまでに定番の食べ物は口にしたし、参加型の夜店もひと通り遊んで来た。
充分過ぎる程、祭りを堪能しているのに彼は一体何が不満だったのだろうか…?

頬張った小振りのリンゴ飴を口から取り出し、「どうかした?」と彼に訊ねた。
首を傾げ、下から覗き込むように彼の顔を見ると、瞑っていた瞳を見開き、私を見つめた。
そして頭の天辺から足の先まで、改めて私の全身を見つめ、頬を赤らめたかと思ったら目元を両手で覆い、今度は深い息を吐き出した。

「や、自分の誕生日にこうして彼女の浴衣姿拝めるのは凄く嬉しいんだけどさ……」なんて。
普段の彼とは違う、雑踏に掻き消されそうな下ったらずで甘ったるい声でポツポツ呟いたかと思えば。

「なんかこう……“俺、誕生日だからどんどん祝ってよッ”的なオーラをたまには出してみたいワケッ?!」

急に顔を上げ、叫ぶように心のモヤを吐き出す激しい感情の起伏に、私は肩を竦ませ、持っていたリンゴ飴の棒に力を入れた。

きっと長期休暇に生まれた人達は皆、1度は通る悩み事なのだろう。
しかも彼の誕生日はお盆に入るか入らないかぐらいの時期。

旅行や帰省する友人達も多く、誕生日当日に直接“おめでとう”という言葉を聞く事が少なかった故の悩みだろう。

お祝いの言葉を求めているくせに、「だからと言って自分から友達招集掛けて祝って貰うのもどうかなー、とかさ」なんて。
何とも矛盾したストレスを抱えているようだ。

そんなジレンマに陥る彼に私は口元を綻ばせながら「なんだ」と、呆れた音を出す。

「私は夏生まれも良いと思うけどなー」

羨む私に彼は透かさず「そんな事ないッ」と声を強めて否定する。
そんな彼をなだめるように、私は至って和かに言葉を続ける。

「お休みって事は1日好きな人と一緒にいれるし、それに」

彼の揺れる浴衣の袖を掴み、少し火照った頬を俯き、垂れた前髪で隠す。

「こうしてお祭りなんかあったら夜遅くまで一緒にいれる口実になるじゃん」

祭囃子に紛れるようにポツリと呟いた私の声はしっかりと彼の耳に届いたようで。
彼の頬は私が手にしてたリンゴ飴より赤く染まった_____

“リンゴ飴”


夜久さん
お誕生日おめでとうございます!
雑な小ネタで大変申し訳ないです/汗

あとは尽八さん……僕にはもう無理かもしれません…とりあえず最後まで足掻きます…ッ

そしてどうでも良いですが、新刊が発売されてから読み直すたび、五色君が妙に気になって仕方ありません
ぱっつんが堪らない……!



2015/08/08
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