「名前、」
「何?」
「今日、何の、日やと思う…?」
「ん?今日何か有った?」
「え?」
「え?」
もうこれ機嫌悪いとかそんな話やないで、最悪や最悪、俺がどんだけ楽しみにしとったか、名前は一つも分かってへん、せや、今やって訳分からんみたいな感じで俺の後着いてきとる。
教室に着いて、自分の席に乱暴に座る。
回りの方から、何や、一氏今日滅茶苦茶機嫌悪そうやん…とか聞こえてきた。
当たり前やろ、現在進行形で機嫌悪いんやから。
俺がぶすーっとしとると名前は腑に落ちないような表情で話し掛けてきた、今名前の顔見たないわ。
「ユウジ、私何かした?」
「…別に。」
「嘘だー。」
「別に云うてるやろ。」
素っ気なく返すと、それから名前の返事が聞こえへん。
少しだけ気になってチラッと名前を盗み見ると、困った風に眉を下げとった、何ちゅー情けない顔してんねん。
俺は溜め息をつきながら名前の方に顔を向けると、名前は、ぱっと嬉しそうに此方を見る。
「今日…、ホンマに何の日か知らへんのか…?」
「別に、今日は体育無いし、日直でもないし、課題の提出日でもないし…。」
ホンマ分かってへん、ちゅーか、分かってへんって云うよりそもそも知らへんのとちゃうか?…そういえば、俺の誕生日、名前に教えてなかったかも知らん…何や、今更ながら滅茶苦茶恥ずかしゅうなってきたんやけど、これ絶対顔赤いやろ。
情けのおて、名前から目をそらすと名前は、本当、今日何が有るの?と必死に思い出そうとしとった。
別に考えんでも良えんに、誕生日教えてへんねやから…俺は、深い溜め息をつきながら自分の不甲斐なさに(というか用意の悪さ)絶望。
すると名前が、あ、と小さく声を漏らした。
「思い出した、今日、誰かの…、誕生日…。」
「え、」
嘘や、え、釣りやないよな、ホンマに分かっとんのか?これ、期待、しても…。
「あー!ユウジおめでとうー!」
そう云いながら、ごっつ笑顔で拍手してくる名前。
いや、嬉しいんやけど、嬉しいんやけど、何で名前俺の誕生日知ってんねやろ、教えてへんのに。
「いやー、この前小春からユウジ誕生日だから祝ってあげてーって云われてたんだけど、ちょっと忘れてた…。」
「あー…、そう、か。」
後で小春にお礼云うとこ、何て考えながら、ゆるゆる立ち上がって名前の頭を撫でる。
名前は少しだけ申し訳無さそうに、気付くの遅くなってごめんね、と謝ってきた。
「別に謝らんでも良えわ。俺、教えてへんかったし。」
「それでも、折角の誕生日なんだしお祝いしたいじゃん…。」
「…、おおきに。」
ホンマに小さく礼を云うと、名前は嬉しそうににへっと笑う。
そんな名前が愛しゅうて、つい抱き締めてもうた、殴られるかな思たけど名前も、来年はちゃんと一番に祝ってみせるよ!何て云いながら、俺の背中をポンポンっと叩いてきたから、安心した。
俺は緩む口元を引き締めて、名前とほんの少し距離を空ける。
熱い頬が煩わしいけど、少しだけ心地好かった。
「まぁ、ちょっとは期待しといたるわ。」
「任しとけぃ!」
2011/09/11 H.Yuzi HappyBirthDay.