額、耳、頬、喉、首筋、腕、次は何処に口付けをしようか。
「蔵、マジでキモい。」
「何や、今更恥ずかしがらんでも良えやん。」
「蔵、気持ち悪い。」
そう云いながら、早足で白石の前を歩いている名前、そんな名前を、顔を緩ませながらついていく白石。
暫くは付かず離れずな距離をとっていた白石だったが、いきなりぐいっと名前の手首を掴んで自分の腕の中におさめた。
「離して。」
「嫌や、離しとおない。」
名前は少しだけ嫌な顔をして見せたが、観念したのか溜め息をつきながらも白石の腕の中に大人しくおさまる。
それを良い事に、白石は、良え子や、と云いながら名前の髪に顔を軽く押し付けた、そのまま髪に優しく口付けをおとす。
そして、名前の体をくるりと反転させて自分の方に向かせる、至近距離で向かい合う形なので、名前は少しだけ顔を俯かせた、そんな名前を白石は嬉しそうに顔を綻ばせながら、今度は額に口付けをする。
「また始まった…。」
「んー、でも名前も嫌いやないやろ?」
「…うっさい。」
白石に云われ、更に顔を赤くする名前。
「ホンマ、名前可愛えなぁ。」
「五月蝿い、キス魔。」
「俺がキス魔になるんは名前の前だけやで。」
「…阿呆。」
「名前の前でだけな。」
名前がそれ以上は何も云わないでいると、白石は満足そうに名前の頬やら手の甲に慈しむように口付けをしていく。
そして、お互いの唇と唇が付きそうな位に近付き白石は囁いた。
「して良え…?」
「…いっつもは聞かないくせに、」
「せやな。」
小さく笑いながらも、すっと真面目な顔になる白石、更に近付く距離に名前はぎゅっと目を瞑った。
「ちょい待ちいいいい!」
しかし、いきなり背後から声が聞こえてきて、名前は驚きぱっと目を開ける。
目の前には、むすっとした表情の白石、どうやら名前の後ろに見える人物を睨んでいるらしい、名前もつられて振り返ると、そこには顔を真っ赤にした謙也がわなわな震えながら立っていた。
「何や謙也。用事無いんやったら、早うどっか行ってくれへん?」
「ばっ、阿呆かっ!此処何処やと思ってんねん!」
「学校。」
「しれっと答えんな!」
「ホンマ、謙也うっさいわ。黙っといてえな。」
白石はそう云いながら、謙也に向かってしっしっとジェスチャーすると、謙也は、こんのリア充!生徒指導なってまえ!と泪目になりながら走り去ってしまった。
残された白石と名前の間に、何とも云えない微妙な空気が流れる。
「あー、まぁ…、」
先に口を開いたのは白石だった。
「何?」
「今はおあずけやけど、家帰ったら、また沢山したるからな。」
「…蔵、キモいよ。」
「それは誉め言葉として受け取っとくわ。」
そう云いながらするっと優しく名前の手を握る白石、名前は、はにかみながら少しだけ笑った。
2011/08/22