ガタンガタン。
揺れる車と、君の髪。
毎朝見る栗色の髪の毛、時々太陽の光に反射して、金色にも見える。
俺は今日もぼーっとその髪の毛を見とった。
最初の頃は只の好奇心、珍しい髪色が目の端に入り込んで、反射的に振り返る。
そうすると、彼奴の髪があまりにも綺麗で、俺は見惚れてもうた、其れからは、バスに乗ると必ずあの髪を探す日々、ホンマは雨の日以外は全部徒歩やけどあの栗色の髪の毛見たさに、ついついバスを使おてまう。
そろそろ財布がピンチやねんけど、やっぱり見たい衝動には勝てへん訳で。
今日も決まった時間にあのバスに乗った。
彼奴は大抵一番前の席に座っとる。
やっぱり、今日もおった、目当ての人物。
俺は、席には座らず握り棒に寄り掛かって立った。
やっぱり何回見ても綺麗やなー。
俺は彼奴の体に穴があくんとちゃうかって位、じーっと凝視する、まぁ、実際は髪なんやけど…ちゅーか俺気持ち悪いな、ストーカーみたいやん、とか何とか考えながら、少しだけ眠たい目を擦る、昨日なんか寝れへんかったし、何もしてなかったんやけどなー…。
重たい瞼を指で無理矢理開いてちょっとでも眠気を払おうとした、せやけど、意思とは裏腹に閉じようとする目にイライラする、ウザったいわー、目開けとかんと見られへんやん。
俺は、いーっ、と小さく声を出しながら瞼の上から目をグリグリと押す、お、案外良えかも。
何て、新しい発見して驚いとったら、あの髪が揺れた。
綺麗に流れる髪にまた見惚れとったら、髪の主と何故かバッチリ目が合った。
え…何で?今、俺、ごっつ変な顔しとる、のに。
ひきつる頬が手に取るように分かった、此れ絶対変な奴扱いされるやろな。
何や、ばつが悪うて目そらそうとした、せやけど、彼奴がふわって笑うもんやから、不覚にも心臓が大きく跳ねて。
何やコレ何やコレ、心臓、滅茶苦茶、痛いんやけど、ちゅーか、顔熱いし、訳分からん訳分からん。
夢中で心臓どんどん叩いとったら、運転手に、大丈夫ですか?って心配された。
兎に角恥ずかしかったから、丁度止まった停留所で急いで下りたった。
せやけど、何やこのままやったら嫌やから、バス降りる時に彼奴をちょっとだけ睨んだ、嫌われたらどないしよ、何て考えながら、明日もバスに乗る。
(また、心臓痛なってきた…ハッ…!まさか、バス恐怖症!?)
2011/07/07