ホンマ好きなんや、誰にも渡したない、ずっと俺だけ見とって欲しい。

俺以外誰も知らんで良え。

新しく入った学校で初めて出来た女友達が名前やった、小春が好きな俺の事、気持ち悪い奴とか思わへん。

そんな珍しい奴やったからかは分からへんけど、俺と名前が名前で呼び合う仲になったんは遅くなかった、というか、初めて席が隣になった時。


「一氏君、だったっけ?」


と、しどろもどろながらに話し掛けて来て、俺は女子何か全然興味あらへんかったし、取り敢えず持前の目付きの悪さと眉間に少し皺を寄せて迷惑そうに軽く返事したった。

そうすれば大抵の人間は不快感覚えて近付いてこんくなる、筈やったんやけど。

何故か名前には全く通用せんかった、逆にへらへら笑いながら、


「名前合ってて良かったっ。」


なんて云っとった、最初はその笑い方も癪に触った。

名前がへらへら笑う度に仏頂面しとった、けど今は、そのへらへら柔らかい感じで笑う表情が一番好きや。

ホンマ、初めて会った時はこんな感情生まれる筈無かった、いや、俺自身生まれたらアカンって心のどっかで思ってたんかも知れへん。

何でかは俺も分からへんけど、自分に規制掛けとったんかもな。

ていうか、そんなん今はどうでも良えねん、昔の思い出を掘り返すよりも、今この状況をどうするかの方が重要やわ。

冷たい床に散らばるセミロングの髪の毛、恐怖で震える細い手、強張ってきつく結ばれた口、くりくりした大きな瞳からは綺麗な滴が流れる、俺の下で小刻みに震える小さな名前。

そんな名前でさえ愛しく思えてしまう俺はきっと病気や、しかも重度の依存症。

俺が自嘲気味に笑ってみせると名前は少しだけ肩の力が抜けたような気がした。

残念、機嫌良うなったら終わるなんて甘ないで。

俺はゆっくりと名前の首に手を掛ける、名前の瞳は驚きと不安と恐怖で焦点が定まってない、俺はそんな名前に囁いた。


「ちゃんと俺の事、見てや。」

元々、俺にこんな事させたんも、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部自分なんやで?

今迄添えているだけの手に少しだけ力を込めた。

そうすると、面白い位に反応を示す名前、苦しそうに俺の手を引き離そうとしとる、そんなん無理なのに、男の力に女が敵う訳無いやん。

俺は更に首を絞める力を強めれば、本格的にヤバいと感じ取った名前は俺の手に爪立てたり、叩いたりと抵抗してみせる、んな弱々しい力で俺のこと拒絶しとるつもり何やろか、無駄や無駄、けど、名前に付けられる傷ならなんぼでも付けて欲しいわ。

そんな事を考えながらほぼ虫の息の名前に云う。


「ごめんな。ホンマは、こんな事したないんや。名前と一緒に居れるだけで俺は幸せやった。けど、名前は違うんやろ?」


俺はそう云いながら泣いた、ポタポタと名前の顔に俺の汚い滴が落ちる。

その滴は名前の頬を伝って、冷たい床に広がっていく、そんな俺を見て名前は苦しそうに手を上げ、俺の頬に添えた、そして、俺が一番好きやった笑顔で小さく呟いた。


「愛、して、る…、」


俺の手から力が抜けて、急に解放されたもんやから名前は酸素を吸い過ぎてゲホゲホと咳き込んどった。

けど、咳き込んどる名前をお構い無しに抱き締める、名前は驚いて小さく声を漏らした、それでも、ゆっくりと俺の背中に手を回して控えめに服を掴んだ。

何やってたんやろ、俺、ホンマ、最悪やわ。

気付けばまた溢れ出してくる涙、名前の服をどんどん濡らしていく。

俺は俺の気が済むまで暫く泣き続けた。

ごめん、ありがとう、世界で一番愛してるから、何処にも行かんとって、俺から離れんとって、俺を独りにせんとって、ずっと俺の傍で俺の大好きな笑顔を見せて。


2011/06/04
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