「よっ、名前。今日も良い天気やな。」


俺の彼女は


「…だから何?」

「何や、つれへんなー。」

「つれなくて結構。というか白石、私に話し掛けないでくれる?」


ツンデレだ。


名前は冷たい目で白石を見たが、肝心の白石は気にも止めず、今日も良いツンデレっぷりやな、と云っている。

名前はそんな白石を無視し、歩き出した。


「ちょ、一緒に行こうや。」

「慎んで辞退します。」


名前は棒読みでそう云うと、歩く速度を上げた。

しかし、白石とはかなり身長差が有るのであまり意味は成さなかずに、易々と名前に追い付いた白石は話始めた。


「名前、今日何の日か知っとるか?」

「別に。」


名前は短く返事をし、白石をあしらおうとしたが、こんな事で引く白石ではない。

白石はまた話始めた。


「今日はエイプリルフールなんやで。」

「ふーん。」

「せやから、今日はどんな嘘でも許されるんや。」


名前は内心、其れは違うだろ、と思ったが、白石と会話をするのが癪だったので何も 云わなかった。

そんな名前を見てからか、白石は名前にこう云った。


「俺、名前の事、可愛え何か思ってないで。」

「別に自分が可愛い何か、生まれてこのかた、思った事なんか一度も無い。」


名前がすかさずそう返すと白石は慌てて「嘘に決まってるやん。」と前言を撤回した。

暫しの静寂が流れ、先に沈黙を破ったのは名前の方だった。


「私、白石の事大好きだから。」

「……へ?」


名前の突然の言葉に驚きを隠せない白石は間抜けな声を上げた。

そして、名前は追い討ちを掛ける様に云った。


「白石の事、世界で一番愛してる。」

「なぁっ!?」


白石は何時も冷たく当たられている分、こういう耐性は殆んどと云っても過言では無い位備わっていなかった。

暫く白石は立ち止まって顔を赤く染めていたが、少し落ち着いたらしく口を開いた。

けれども、まだ頬は赤いままだった。


「さっき云った事、全部嘘なんか?」


白石はおずおずと名前に聞いた。

すると名前は少し云い難そうに眉を潜めながらも云った。


「さぁ。嘘かも知れないし、本当かも知れないし。勝手に決めつけるのは止めた方が良いよ。」


そう云うと名前は踵を返し、また歩き出した。

白石は目を見開き名前を見た、心なしか、風に揺れる髪から除いた名前の耳は赤いように見えた。

アカン、やっぱり可愛ぇ。

白石は何時の間にか駆け出し、名前の手を掴む。

名前はかなり驚いていたが、白石の手を振りほどこうとはしなかった。

少しだけ乱れた息を直しながら白石は名前の目を真っ直ぐ見つめていった。


「俺、やっぱり名前の事好きや。」


名前はキョトンとしながらも、白石に問い掛けた。


「…其れは嘘?本当?」


其処にいたのは、冷たい名前ではなく、純粋に白石の言葉を待つ名前がいた。

そんな名前を白石はただ優しく抱き締め、耳元で囁いた。

名前は白石のその行動に驚き何か云おうとしたが、眼前に有る白石の顔のせいで何も云えなかった。

小さなリップ音と共に怪しげな表情をした白石が満足気に云った。


「名前はホンマ可愛ぇな。」

「!?」


今日は快晴、白石の右頬に季節外れの赤い紅葉が咲くのはもう直ぐだ。


2011/04/07
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