暑い、暑過ぎる、真昼にしても何なんだこの暑さは、殺す気か。
のろりのろりと寝そべっていたソファーから立ち上がると、不意に足の力が抜けた。
特に抵抗する事もなく、びたんっと、床に抱き着く。
痛ーい…って、あれ…でも、フローリングちょっと冷たいかも。
「何や、名前もとうとう暑さで頭やられたんか。」
「あ、ユウジー。」
閉じていた瞼を開けて、声がした方に顔を向けると、呆れた様な幻滅した様な何とも云えない表情のユウジと目が合った。
まぁ、名前がイカれとったのは最初から知っとったけどな、何て皮肉を云いながら私の方に近付いてくるユウジ。
そして、私の目の前にドンッと袋を下ろしてユウジも座り込んだ。
「何買ったの?」
「明日の朝のパン。」
「アイスじゃないのかー、ぶーぶー。」
「序でに名前の好きそうなアイスも有ったから、買うて来たけ「ありがとう今食べる用意するね。」はいはい。」
何だ、ユウジも中々気が利くじゃん、流石幼馴染み、最高。
さっきまでのふらつきは何処へやら、きびきびとした動きでキッチンに向かいスプーンを二つ手に取る。
何時の間にか此方の方に来ていたユウジが、がさがさと買い物袋を漁り、二つのアイスを机の上に置いた。
「好きな方、選びや。」
「え、良いの?んじゃ、チョコチップもーらい。」
「えー、俺が苺?」
だって、好きな方選べって云ったじゃん、とアイスの蓋を剥がしながら答えると、不機嫌そうな顔をしながらユウジも蓋を剥がした。
口の中に広がる甘さと冷たさを暫く堪能していると、前方から痛々しい程の視線を感じる。
勿論、視線の主は分かりきっているけども…。
ちらりとユウジの方に目を向けると、ばっちり目が合った、そりゃ、火花が飛び散ったんじゃないかと思う位には。
「さっきから何すか、ユウジ君。」
「いや、俺が食べる筈やったアイスなのにっちゅーて思ってた。」
「どんだけ引きずってんだ。なら、一口あげるよ、ほら。」
そう云って私は、ずいっとユウジの口元付近にアイスの乗っかったスプーンを持っていく。
だけど、ユウジは物凄く微妙な顔をしたまま固まってしまった。
何、もしかして、チョコチップ苦手とかそういう落ちか。
半ば溶けてきたアイスを見ながら一人考えていると、唐突に手首を掴まれる。
吃驚する間も無くそのまま腕を引っ張られ、少しだけ液状化したアイスはユウジの口の中におさめられた。
今、目の前で起こった出来事に頭が付いていかず、間抜けな表情でユウジを見る。
すると、ユウジはおもむろに口を開いた。
「あ、今、絶対俺に惚れたやろ、アカンで、俺には小春っちゅー大切な、そらもう大切な相方がおんねん、せやから、惚れられても、俺、名前の気持ちには答えられへんで、まぁ、ファンになるっちゅー事なら、まだ許されるけどな、あっはっはっ!」
いや、そんな耳まで真っ赤な顔して云われても何の説得力も無いからね、うん。
取り敢えず、ユウジの言動にムカついたから一発殴ってやった。
(おま、何で殴んねん、おい、聞いとんのか)
((まさか、ユウジがねー))
2013/08/04