私は日曜日が好き。

時間に追われず学校の事もご飯の事も家事も忘れて暖かい布団に包まり寝こけられるから。

今日も今日とて、暖かい布団でぬくぬく。

ああ、幸せ。


「名前ー、今日は良え天気やでー!」


だった。

突如として部屋に入ってきた彼氏によってガラガラと音をたてて崩れていく私の好きな日曜日。

バレないように小さく溜め息を吐いて、もぞもぞと枕元に置いてある時計を眺める。

最近一目惚れして購入したデジタル時計は、AM8:01を表示していた。

…後四時間は眠れてたのに…くそ。

眉間に皺を寄せながら、ぐいっと布団を頭まで被る。

すると、シャーッとカーテンを開ける音が耳に入り勝手に開けんななんて思っていたら、ポンポンとお腹辺りを優しく叩かれた。


「名前の愛しい愛しい彼氏、白石蔵ノ介君が八時をお知らせすんでー!」

「…ちっ、」


聞こえるように舌打ちをしてみると、蔵ノ介は酷いわ!と云ってゆさゆさと私を揺する。

私、揺すられて起こされるのが一番嫌いなんですけど。

余りにもイラッとしたから、布団から手だけ出し蔵ノ介の手を抓った。

痛い痛い!なんて声は無視、気分悪くさせたのはアンタの方だ。

一通り抓り満足したからそろそろと布団の中に手を戻そうとしたら、きゅっと人差し指を握られる。(蔵ノ介の手は少しだけひんやりして冷たい)

無理矢理引っ込めようとすれば、なぁなぁと話し掛けられた。


「何処か行かへん?」

「…ちっ、」

「名前が行きたがっとった店行こうや。」

「…ちっ、」

「もう近くの公園でも良えから、」

「…ちっ、」


外に出たくない態度を全面に押し出し舌打ちをしていると、諦めたのかするりと指が解放された。

特に驚く事もなく手を布団に収めて目を閉じる。

暫く静かになり、また眠気がやって来た。

ああ、この感覚も好き。

浅い眠りの間でそう考えていると、ギシッとベッドのスプリング軋んだ。

何事かと重い目蓋を開くと、目の前に蔵ノ介の整った顔、左右を見れば逃げられないようにつかれている腕。


「…何してんの、」

「いや、眠り姫を起こすのは王子のキスやん?な?」

「な?って云われても意味分かんないから、早く退け…、」


ぐいーっと蔵ノ介の顎を手で押して遠ざける。

しかし、蔵ノ介も負けじと顔を近付けてくる。

蔵ノ介は、観念しいやなんて云いながら顎にある私の両手を掴みベッドに縫い付けた。


「っ、」

「んー、良え眺めやわぁ。」


その恍惚とした顔止めろ、気持ち悪い。(朝から何でこんな仕打ちを…)

幾ら両腕に力を込めて拘束を解こうとしてもびくともしない。

寧ろ、抵抗している私を見て楽しそうに笑っている蔵ノ介に腹がたったから抵抗するのを止めた。

そんな私の行動に驚いたの、蔵ノ介は目をぱちぱちさせていたけど、直ぐにまた笑う。


「やっと起きる気になった?」

「…ちっ、」


その言葉に舌打ちで返すと、蔵ノ介は苦笑いしながら私のおでこに軽くキスをした。

ぶすっとした顔で蔵ノ介を見れば、やっぱり余裕そうに笑っていて。

何となく悔しかったから今度は私から口にキスしてやった。

離れる時にちらりと表情を盗み見れば、耳まで真っ赤にして驚いている蔵ノ介。

あはは、ざまあみろ。


2012/11/20
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