「名前のくしゃみが出えへんかった時のちょっとしょんぼりした顔、めっちゃ可愛えよな。」

「…は?」


白石が妙に真剣な顔で、聞いて欲しい話があるんやけどって云うてきたから、こっちも態々課題やっとった手を止めて真剣に聞いてやったらこれや、意味分からん。

俺が微妙な表情しとるからか、白石はもう一度同じ事を云う。

阿呆、聞こえとるわ。

何や、真剣に話聞くのも阿呆らしゅうなって、俺が課題に目を向けてし始めると白石は、なぁ、聞いとる?っちゅーて背中をバンバン叩いてきよった。

…ウザイ。

俺は、適当に返しながら課題を進める。(てか、教室に他の奴おるんやからそいつ等と話せや)


「もう、何か言葉で上手く説明出来ひんのやけど、ホンマ可愛えんや。この世の生物とは思えへん位可愛えんや。眉毛綺麗に八の字にして、口もオメガっぽく、こう…うにゅうみたいな感じで、ホンマヤバイ。神っとる。本人は誰にも見られてへんと思っとるみたいやけど、俺がバッチリ見とるのに気付いてへんし。そういう所も可愛え。もう名前可愛過ぎるわ。可愛えって名前のために存在する言葉やろ。可愛え=名前、名前=可愛え。名前ホンマ女神。」

「へぇ。」


一人でべらべらくっちゃべっとる白石に空返事をすると、謙也に名前の可愛さが理解出来ひんのか!っちゅーて肩掴まれて揺らされる。

お陰で証明問題の最後の所で盛大に文字がぶれた。

もう白石死んだら良えのに。


「あーもー離せや!」

「謙也に名前の魅力が伝わるまで許さん!」

「許すとかやなくて離せ云うてんねん!」


余りにも白石がしつこうて流石にキレてギャンギャン云い合っとると、丁度財前が教室の前を通り掛かった。


「財前んんんん!!」

「うわ、キモ。」


何時の間にか俺の肩から手を離した白石は、叫びながら窓に駆け寄り身を乗り出して財前のシャツの裾を掴む。

白石とは同じ部活の面子として三年付き合うてきたけど、これは…この光景は引く、キモイ。

財前を見ると、汚物でも見るような目で白石を見とる。(分かりたないけどその気持ち分かるわ)

そんな財前を気にもせず、白石は話す。


「財前、名前可愛えよな?」

「そうっスか?中の中位ですやん。」

「……まぁまぁまぁまぁ、ちょお話そうや。」

「はぁ?」


めっちゃ嫌そうな顔しとる財前をよそに、白石は財前を半ば無理矢理教室に連れ込んだ。(ホンマ嫌そう)

財前を適当に椅子に座らせて話し始める白石。


「確かに、名前は普通の何処にでもおるような女の子や。せやけど、笑った顔とか何か必死なって頑張っとる姿とか可愛うない?好感持てるくない?」

「そんなん誰でもやろ。てか、名前さん胸デカいっスよね。」

「え、財前もそう思う?」

「コートの外、とことこ走っとる名前さん見とると、胸も一緒にたゆんたゆん揺れててホンマヤバイっすわ。」

「せやろ…!あんな可愛らしいのに、けしからん胸しとるっちゅーギャップが…、」

「ジャージ着とっとても隠しきれてへんあたり、ガチの巨乳やな。」


何なん、こいつらの下品な会話。

ちゅーか、くしゃみの件は何処に行ってんねん。


「俺、一回気分悪い時に名前さんに膝枕してもろた事あるんですけど、下からのあのアングルは刺激強かったすわ。」

「何それ羨ましい。」

「部長もやってもろたら良えですやん。名前さん結構ガンガン攻めたら断れへんタイプやし。」

「せやけど、何や名前、俺にだけ厳しいねん。」

「嫌われとるんと違いますか?」

「おま、一応先輩に向かって何ちゅー心に突き刺さるセリフを、」

「嫌われとるのは事実ですやろ?」

「ぐ…、」

「もう時間ないんで行きますわ。」

「え?あ、おん。」


財前は白石を軽く流して教室を出ていった。(同級生として恥ずかしいんやけど)

白石は、まだ名前の胸ってーとかどうのこうの呟いとる。

もうこいつ嫌やわー。

俺が、じとっとした目で白石を見とると突然白石があー!っちゅーてデカイ声あげて立ち上がった。

せやけど、直ぐに脱力して椅子にすとんと座る。

面倒そうやけど、一応話し掛けてやった。


「どないしてん。」

「…くしゃみの話するの忘れた…。」


ざまぁ。


2012/09/29
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