あんたは俺だけの物、俺だけに笑いかければ良い、俺だけに弱い所を見せれば良い、あんたの全部を知ってるのは俺だけで良い。


「光。」

「…何スか。」


俺の前にいるのは、テニス部マネージャー兼彼女の名字名前、一応俺より年上で先輩。

ただ何となく暇だったので、名前のクラスに来たら、名前が部長と謙也さんとあまりにも楽しそうに話してたから勘に障って、つい部長と謙也さんの間に割って入った。

そんな俺に名前は眉間に人差し指をピッと向けた。


「…何や。」

「そんなに眉間に皺寄せてると、疲れないの?」

「別に。ちゅーか、指指すな。」


俺はそう云うと名前の手を払った。

名前は俺が手を払った事何か気にせず、そっか、とだけ云った。


「何や財前。輪ん中入ってきたわりには機嫌悪いやん。」

「名前も手払われっとってよう怒らへんなー。俺やったらキレとるで!」


そう云うと謙也さんは俺が払った名前の手を擦った。

俺はその謙也さんの行為に苛立った。

何勝手に人の彼女に触ってんねん、第一、名前も何で何も云わへんねん、何ヘラヘラ笑ってんねん。

気付けば俺は謙也さんの手を叩いていた。


「いっ!?財前何すんねん!」

ハッと我に帰ると、謙也さんはかなり怒っていて、名前も突然の俺の行為に驚いていたが、直ぐに謙也さんを心配し始めた。

何でや、何でそんな奴に構うんや。


「名前のせいや。」


これ以上、俺を狂わすな。


「あんたの男は誰や。俺やろ。なのに、何で違う奴に構うねん。」


アカン、止まらん。


俺は名前の返事を待たず言葉を続けた。「あんたは俺だけ見とけば良ぇ。他の奴なんか見んで良ぇ。話もせんで良ぇ。あんたは俺だけの物や。部長にも、謙也さんにも誰にも渡さん。」


名前は俺が云った事が理解出来ていないのか口を開けている、いや、名前だけじゃない、部長も、謙也さんも驚いた様な呆れた様な表情をしていた。


「…何ちゅーか、お騒がせなカップルやなー。」


沈黙を破ったのは部長だった。

「ま。似た者同士、仲良ぅな。」


…似た者同士…?

俺はその言葉の意味が気になり部長に聞いた。


「…似た者同士ってどういう意味っスか。」


すると部長は妖しい笑みを浮かべながら「そのまんまや。」と云い、謙也さんを引き連れて教室から出ていった。

しかし、直ぐ戻って来てこう云った。

「財前、今日は部活無しや。積もる話はその時にしぃ。」


そう云うと部長は帰った。

気まずい空気が流れる。


「…じゃあ、帰ろうか…。」


そう云い動き出したのは名前だった。

俺は少し遅れて返事をした。

夕日が降り注ぐ道で、また気まずい空気が流れる。

お互いの靴音しか聞こえない。

しかし、ぱたりと1つの音が消える。

俺は音が無くなった事に気付き振り返ると、名前が立ち止まって俺を見つめていた。


「…何してん。帰らへんの…」

「光。」


俺が名前に話していると名前は話を遮り、俺の名前を呼んだ。


「…何や。」


俺が返事をすると、名前は少し戸惑っていたが腹を決めたのか小さな拳を握り、話始めた。


「さっき、云った事、本気…?」


名前は真っ直ぐ俺を見つめる。

まだ少し冷える風が吹いて、名前のやわらかい髪がフワリと風に舞う。

そして、大きな夕日が沈んでいく、世界全てがキラキラと輝いている。

その光景に、俺は心が奪われた。

声を出す事さえも忘れ、只その光景を見た。

風が止み、夕日も殆ど落ちた所で俺はやっと喋った。


「さっき云った事は全部本気や。第一嘘なんか云ぅても、俺に何も得無いし。名前は俺の物なんやろ。なら、俺だけに構えば良ぇですやん。他の男に現何てぬかすな。」


俺が話終わると名前は少し驚いていたが、直ぐにへらっと笑った。


「…何スか、其の気持ち悪い笑い方は。」


俺が不機嫌そうに聞くと名前は云った。


「だって、何か久し振りに光にそんな事云われたなぁって思って…。」

「阿呆くさ…。」


そう云うと俺は名前の方に向いていた体を元の帰り道に戻し、歩き始めた。

すると、後ろから追い付いた名前は俺の手を握ってきたから、名前の方を見ると、満足気にまたへらっと笑っていた。


「…名前先輩、ホンマに間抜けな顔で笑うんやな。」


俺が皮肉めいた感じで云うと名前は、


「光は其の間抜けな顔で笑う、私の彼氏なんでしょ?」


と云った。

嗚呼、やっぱりこんな奴、俺以外の奴何かに渡せない、いや、絶対に渡さない。

例え名前の心が俺から離れたとしても、俺は絶対名前を逃がさない。

俺はそう心に誓うと、名前の手を少しだけ強く握った。

後日

「ホンマ彼奴等だけは、面倒やな。」
「何やねん!両方とも独占欲強過ぎやろ!」
「名前も、財前の話が出るだけで「光は私のなんだからっ」て云うしな。」
「まぁ、そうやって必死な所とか可愛ぇんやけどな。」
「謙也。財前おったら殺されとるで…。」
「ホンマですわ。口には気ぃ付けた方が良ぇッスよ。」
「せやな。財前の云う通りや。財前…の…って…え?財前…?」
「名前先輩が誰かに現ぬかしとらんか見に来たんですけど、違い奴が名前先輩に現ぬかしとるとは。」
「いや、財前、此れには訳がっ!」
「ライバルは早めに消さんといけないッスよね、謙也さん?」
「い、嫌あぁぁあああぁあ!!!」


2011/04/07
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -