おまじないなんていう非現実的なもので恋が実ったら世の中何も苦労しないけどもその非現実的なものに頼る位にあの子が大好きなので宜しくお願いします。

最近、ユウジの様子が可笑しい、いや、彼が可笑しいのは前々から知ってたけど近頃本当に可笑しい、寧ろ怪しい。

例えば私が教室でぼんやり外を眺めてて、ふと振り返れば吃驚した表情のユウジとご対面、何、と聞こうとした瞬間には一目散に逃げていく。

部活でも、私が部室に忘れ物して慌てて戻った時にユウジが私のロッカーの前でこそこそ何かをしていた、私が入ってきたのに気付けば、また一目散に逃走、そんなユウジの奇行が始まって、今日で丁度一ヶ月目、流石に本気で怪しく感じ始めて、ユウジに一番近い存在である小春に聞いてみる事にした。

小春は私が幾ら冷めた視線を送ってもけしてめげない異様にポジティブな人で、今のユウジと同じ位には可笑しい人だったりする。


「名前ちゃんがウチに話し掛けるなんて珍しいなぁ。ハッ…!まさか、恋なん?何処かの誰かにラブなん?きゃー!名前ちゃんが大人の階段を上ってまう〜!」

「五月蝿い。」

「あんっ!」


あまりの五月蝿さにぺちりと小春の頭を叩くと変な喘ぎ声が聞こえてきたけど気にしない。

私は未だに一人であーだこーだと妄想を繰り広げている小春にさっさと話を切り出した。


「最近さ、ユウジに変わった事とか無い?」

「変わった事?」

「うん。例えば何時もしてなかった事するようになったり、影でこそこそ何かしてたりとか…。」


小春は人差し指を口元に当てながら、んーと頭を悩ませる、しかし、ある答えに辿り着いたのか口を開いた。


「そういえば、最近何かにつけてそわそわしとるっちゅーか、落ち着かへんみたいな感じではあるなぁ。」

「ふーん…。」


取り敢えず、ユウジの行動に変化があったのは確からしい、私は軽くお礼を云い、行かんとって〜!と制服の裾にしがみつく小春を振り払って教室から出た。

宛もなくぶらぶらと廊下を歩いていると、さっきまで話題の中心人物がたらたらと面倒臭そうに此方に向かってきている。

今は特に話す事もないし、通り過ぎようと廊下の端に寄って歩いているとユウジも同じく私と同じ方に避ける。

しょうがなく反対方向に避ければまたしてもユウジも同じ方に避ける、何だこいつ…。

そんな事を二回程やりあっていると、お互い歩いてる訳だから距離がどんどん近付いて、


「…退いてもらえない?」

「…自分が退けや。」


その距離、一メートル。

私は私で前を譲る気はなくてユウジも同じく譲ろうとはしないで二人供が避けようとせずに云い合う事五分、余りにもこのやり取りが不毛且つ無駄だったから、しょうがなく横を通り抜けようとするとまたしてもユウジは、すっと私の前に立つ、だから何なの、こいつ。

私が眉間に皺を寄せて睨み付ければ、多少たじろいだ。

暫くユウジは何も云わないし、もうこの際だから勢いで色々聞いてやろうかな。

そう思って私は口を開く。


「ユウジさ、私に何かしようとしてんの?」

「はぁ!?な、んで好き好んで名前に何かせなアカンねん…!自意識過剰なんと違うか!」

「…ふーん。」


本人がここまで否定するなら、私の勘違いなんだろうなーと思いながら制服のポケットを漁りある物を取り出す。

それを制服から出した瞬間にユウジの目の色が急激に変化した。(驚いてるのと焦ってるのが半分みたいな微妙な感じ)

そんなユウジを尻目に、そういえばさと話を振る。


「この前私のロッカーの中にこれが入ってたんだよね。可愛くない?折り紙でハートだよ、ハート。」


可愛いよねぇ、と云いながらユウジを見ると完全に固まっている、眼前で手を振ってみると、ハッとしたように意識を取り戻して話始めた。


「ロッカーの何処にあったん?」

「部誌を置いてる段の後ろの方。部誌出す時に一緒に落ちてきて塵とか思ったけど、何か名前書いてあるんだよね。」

「誰の…?」

「私。」


ぺらっと裏面を向けて見せると、ユウジはこれでもかって程真っ赤な顔をしながらも勢いよく私の手からハートの折り紙を取った。

ちょっと、って云う私の制止も虚しく何処ぞのスピードスターにも匹敵する位の早さで逃げていったユウジ。

おまじないなんかしなくても、私はユウジの事好きなんだけどなぁ。


(小春ううう!!名前にバレてしもうたあああ!!もうアカンわあ…。)
(ユウ君、落ち込んどる場合やないで!)
(せやけど、)
(絶対名前ちゃん振り向かしたる!っちゅーたのは誰や?)
(…俺、です…。)
(せやったら諦めんと次頑張れば良えやんか!)
(…せやな!名前…、絶対に振り向かしたるっ!)
(その意気やで〜!ほな、次はこのおまじないやってみましょ!)


2012/05/04
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