※となりのト●ロをもじった美味しい名前が出てきます、嫌だという方はここでUターンお願いします。
トントロば探さんね。
そう云いながら手を差し出す、貴方は一体誰ですか?
私は何時ものように授業を抜け出して屋上に繰り出す、でも、今日は何故か片手に傘を一本。
別に雨が降っている訳じゃなくて、理由は特になく教室を抜ける時に咄嗟に持ってきたみたい、ちゃんと覚えてないけど。
屋上に着いて、私は取り敢えず他に人が来ないように軽くつっかえを扉に仕掛け地面に座った。
暫く風に吹かれながら空を見上げていると、あまりにも味気無い気がして私はスカートのポケットを漁って小さい飴玉を取り出す。
けど、取り出す時に手からすり抜けた飴玉が一つだけコロコロと扉の近くまで転がってしまった…まぁまぁまぁ、帰る時に序でに拾ってけば良いや。
なんて思いながら口の中で飴玉を転がして甘さを堪能する。
そのままぼーっとしてると、ふと視界の端に入ったのはドット柄の私の傘。
取り敢えず傘の柄を掴んでくるくると回してみる…何か目回ってきたな。
ちょっと気分が悪くなってきたので私は傘をパタリと地面に置いた。
暫く傘を眺めていると、ある映像を思い出す。
私は思い立つや否や傘をパッと開く、そして、持ち手をきゅっと掴んでそのまま傘を空に突き上げた。
ひゅうっという風の音以外何にもない所で一人傘を天に向けて差している私はきっと異常。
切ないから止めようかなと思っているのに、これが案外楽しくて止めるに止められない、畜生、楽しいよ、畜生、こんなお遊びではしゃげるなんて私は大丈夫なんだろうか。
なんて頭の片隅で考えながらも何時の間にか顔を綻ばせて傘で遊んでいた、背後に人がいるのにも気付かずに。
ジャリっという小石を潰したような音でやっと我に帰るものの時既に遅しというやつで、中途半端に下げた腕の間からガッチリと目があう。
私とその人との間に何とも云えない空気が流れる。(いや、私がしたんだけどね)
先に口を開いたのは彼だった。
「自分もトントロ好いと?」
「…え、」
状況が全く飲み込めていない私に、彼は何故か少しだけ嬉しそうに今のってあれやろ?と身ぶり手振りでまでつけて話す。
私は軽くそうだけど、とだけ返事をして傘を畳む。
手元を見ていたから彼が近付いてきているのが分からなくて、畳終わって顔をあげると結構な近さに彼の顔があって驚いた。
少し後退りしていると、彼は私の手をがっと掴んでひだまりみたいな顔で笑う。
その笑顔があまりにも綺麗で、つい手に持っていた傘を落としてしまったけど掴まれているから取ろうにも取れない。
「あの…離してもらえると、嬉しいんですが、」
「一緒にトントロ探さんね!」
「え、」
この人は何を云っているのだろうか、ジヴリが好き過ぎて現実と非現実の区別がつかなくなってるのかな。
取り敢えず、ちょっと可笑しい人には代わりないけど、その誘いに二つ返事で返した私もこの人と同じ位可笑しいから可笑しいもの同士気が合うのかも知れない。
2012/04/02