君が元気になるまで、君が笑顔になるまで、僕は側にいるから。

俺の隣で小さい寝息たてながら眠っとるんはテニス部マネジャー兼俺の彼女の名前。

前から体調が良くないゆうんは知っとったけど部活中に俺ん事チラッと見て親指立てながら倒れた時は流石にどないしよか思うたわ。

まぁ、急いで保健室連れていって休ませたけどな。

今日名前からメールで"風邪だから休むてへぺろー"って来たから"元気そうやな。毒手食らわしに行ったろか?"と返した。

俺は学校来たばっかりやったけど、今日はつまらん授業ばっかりやから鞄持って名前の家に行った。

名前の両親は共働きで日中は家におらん、もしかしたら今日はおるかも、とか思いながらインターホンを鳴らす、反応がない。

俺はもう一度インターホンを鳴らすとごっつ面倒臭そうな声が聞こえてきた。


「はい。」

「俺や、俺。」

「…俺俺詐欺なら間に合ってます。我が家じゃなくて白石蔵ノ介君って云う人の家の方がお金ありますよ。」

「ちょお待ち。本人の前で何ちゅー事云うてんねん。」

「蔵、生憎私は風邪で辛い。」

「せやから看病しに態々学校早退して来たんや。名前が好きな飴も買うてきたんやでー。」

「それを早く云わないか入りなされ。」


ガチャっと切られたかと思うとゆっくりと開かれるドア。

空いたドアの隙間からひょこっと顔を出したのは間違いなく名前なんやけどマスクしとるわマフラーしとるわで殆ど隠れとった。

話しとる間はそないに気付かんかったけど、実際に声を聞くと結構枯れとるな…俺はやんわり名前の背中を押して部屋に戻るように云うと名前は気怠そうに返事をしながら二階に上がっていった。

名前が部屋に行ったんを確認して、俺は持っとったタオルを冷水につけて絞る。

あ、冷えピタの方が良かったかも、そんな事を考えながら名前の部屋に向かった。

なるべく物音たてへんようにドアを開けると名前は大人しくベッドに横になっとった。

名前のおでこに絞ったタオルを置いて俺はベッドに腰掛ける。


「タオルじゃなくて冷えピタが良かった。」

「云う思うたわ。せやけど今日はタオルで我慢しいや。」


名前は嫌そうな顔しながら「しょうがない…。」と呟きながらタオルを払い除けた、何やねんこいつ。

俺はしょうがないの使い方間違っとるやろと思いながらも無惨に床に叩き付けられたタオルを拾う。

そしてそのまま名前の顔にぽいっと投げたった。

また抵抗してくるかと思っとったのに名前は微動だにせずそのまま何もしない。


「名前?」

「…。」

「おーい。」

「…。」


幾ら呼んでも返事がない、え、あの短時間で寝たん?

嘘やろと思いながらそっとタオルを捲ると案の定寝とった、最早感心する早さやな。

溜め息吐きながら名前の顔に無造作に置かれとるタオルを取って畳み直してからまた置いた。

暫くは名前の寝息聞いとったけど余りにも暇やから机の上に乱暴に放置してある本を手に取ってみる。

回りに見えへんようにカバーがしてあるからタイトルが分からん。

ちょっとした好奇心で一番最初のページを捲るけど、パッと目に飛び込んできた文字が「宇宙人を」で寒気がしたからそのまま無言で本を閉じた、勉強しろや。

そんな風に思いながら名前を見る、熱があるんか何時もより頬が赤い。

俺は名前を起こさん程度に優しく頭を撫でた。


「ん…、」

「あ、起こしてしもたか。」

「…触んな。」

「それ彼氏に云う?まぁ、まだまだ時間あるしゆっくり寝て休みや。」

「蔵は私が寝てる間に何するの…やる事無いなら帰りなよ。移すかもよ。」

「いや、名前が淋しくなったらアカンからずっと側におったるわ。」


そう云うと目をぱちくりとさせながら俺を見てくる名前。

せやけど直ぐふいっと視線をそらして額に乗っているタオルを押さえて寝返りを打つ。

心なしか名前の耳が赤いような気がしたが今だけは熱のせいにしとこう。

まぁ、そんな反応が可愛くて耳にキスしたら流石にアカンかったらしく殴られたんは別の話やけどな。


2012/02/23
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