「んー…、取り敢えず何しよか?」

「何もしなくて良いじゃん。黙ってガキ使見なよ。」

「なら王様ゲームしようや。」

「昨日もしたじゃん。」

「羽子板なんかやりたいわ〜。」

「室内で出来る訳ないじゃん。」

「財前、わいと餅早食い競争しようや!」

「絶対嫌や。地球が引っくり返っても金ちゃんとはしたないわ。なぁ、名前さん。」

「分かったから黙っててくれ。」


私は炬燵に肘をついて溜め息を吐いた。

折角の大晦日なのに何でこんなに大人数で過ごさなくちゃいけないんだろうか。

改めて小さな炬燵の回りを見ると、ぐるりと囲むように四天宝寺テニス部のレギュラー陣が居座っている、何この無駄に豪華な面子。


「というか、うちん家に何しに来たの?」

「名前ちゃんが寂しゅうないように皆で一緒に年越ししよ思てな〜。」

「何で本人の了承も得ないでそういう無謀な作戦を決行するかな。」

「え、アカンかった?」

「いや、別に今回はたまたま親が二人共出張中だから良かっただけだからね?普通なら門前払いだよ。」

「名前、俺の小春を追い払ったら死なすど!」

「知らん。」


話が脱線しまくってる…私はまた深い溜め息をつきながら炬燵に突っ伏した。

暫く私が動かなかったからなのか、何人かが私の頭をこれでもかという程つついてきた。

あまりの勢いと痛さに耐えられずガバッと顔をあげるとぴたりと攻撃が止んだ。

取り敢えず、真正面にいた千歳が更に何かしようとしていたので(タイミングの悪い奴…。)チョップを喰らわせた。

次に左右が怪しいから右の財前と左の謙也を交互に見る。


「おい、何で二人共私と目を合わせようとしないんだ。」

「やって名前さんメデューサやろ?目合ったら死にますやん。」

「んだとこらぁ。謙也笑ってんじゃないよ。」


肩をプルプルと震わせながら笑う謙也を私はパシッと軽く叩いたら謙也は、何すんねんっ!と云いながらもにやけていた。

私は気にせず、ミルクティーを飲みながらガキ使を見る、相変わらずの面白さに頬が緩んだ。

そんな時間が暫く続き、私はやけに回りが静かな事に気付く、よく見ると一番騒がしかった金ちゃんが沈没していた。

はたと時計を見れば、もう11時30分過ぎ、そりゃ寝るわなぁ。

兎に角、此処で寝るにしても今のままじゃ風邪引いちゃうし私は暖かい炬燵から抜け出した。

すると白石がそれに気付いて、どないしたん?と聞いてきた。


「いや、見ての通り金ちゃんが寝ちゃったから取り合えず毛布か何かでも持ってこようかなって。」

「せやったら俺も手伝うわ。どうせ名前はそうやって全員のやるつもりやろ。」

「まぁ、風邪引かれても困るし…。」

「それに、二人でやった方が効率良えしな。」


そう云いながら白石は炬燵から出て私の頭をくしゃっと撫でた。

私は今現在寝ている人数を確認した。

金ちゃんと謙也と千歳は完全に寝てる。

ユウジももう少ししたら寝ちゃうんだろうな、明らか目が据わってるし。

流石の小春と財前は携帯つついたり雑誌を読んだりしていた。

取り敢えず私が掛け布団を3枚、白石が5枚持ってリビングに戻ると付けっぱなしだったTVから音量は小さいながらも、わぁっと歓声が上がった。

ふとTVを見るとチャンネルが変わってて何処かの神社の映像が流れていた、きっとリモコンが落ちて誰か触ったんだろうなぁとか頭の片隅で思ってると後ろにいた白石が、年越したなぁ、としみじみと云った。


「白石爺臭いよ。」

「新年早々傷付く事云うなや。」

「……あー、そっか。」

「どないしてん、名前ちゃん?」


思い出したように声を漏らした私に小春は不思議そうに聞いた。


「もう2012年なんだなぁって思っただけ。」

「ホンマ下らんわ。」


パッと斜め下を見るとさっきまで瞑っていた目を開けて財前が私を見た。


「何や、オモロイ事でも云うんか思て聞いとったのに…。何やねん"もう2012年なんだ"て、当たり前やろ。」

「うん、何か、ごめん。面白くないよね。じゃあ、そんな私が作った善哉はきっと不味いから財前は要らないね。折角沢山作ったのに勿体無いことしたわー。」

「名前さんごっつオモロイし可愛えし料理上手いし特に名前さんの作る善哉格別に上手いしマジ好きっすわ善哉下さい。」

「素直で宜しい。」


私がそう云うと財前は少しだけほっとしたような顔をして、どんだけ善哉食べたいんだよみたいなね。

そんな風に喋っているとごそごそと金ちゃん(丸まってるから塊みたい)が動いてゆっくりと起き上がってきた。

金ちゃんは眠たそうに目を擦りながら、何の話してたん…?とごにょごにょと聞いた。


「何でもないよ。五月蝿かった?起こしてごめんね。まだ眠たかったら時間も沢山あるし寝直しても良いよ。」

「うーん…、」


そう云いながら金ちゃんは掛け布団に吸い込まれていった。

そんな金ちゃんを見て苦笑いしつつも隣にいる白石を見る。

白石は、何?俺の顔に何か付いとる?と頬やら目を触った。

私が、口が付いてる、と云って小さく笑うと白石は、何云うてんねん、と云いながら、また私の頭をくしゃっと撫でた。

相変わらず騒がしいTVからは初詣のために集まる人でごった返している。

私は改めてここにいる皆を見てあんまり大差ないなぁと思いながら、善哉を食べる用意を始めた。

皆で迎える新しい年も案外悪くないと思った、午前零時過ぎ。


2012/01/01A HAPPY NEW YEAR!
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