「あ、小春!」

「名前ちゃん、今日も元気やね〜。」


うちがそう云うと名前ちゃんはくりくりした瞳をぱちぱちと瞬かせる、そないに驚いてどないしたんやろ。

何となく聞いてみよ思たけど、うちより早く名前ちゃんが「今日は特別なんだよ!」とにぱぁって笑いながら云うもんやから、取り敢えず頷いた。

今日も良え天気やなぁ。

それから暫く名前ちゃんと他愛のない話をしとったら向こうから「小春〜!」云いながらユウ君が走ってきてうちに抱き着いた。


「ちょっとー!ユウジ何してんの。小春は私のなんだからっ。」

「阿呆抜かせ。小春は俺のモンや!」

「違うもんっ!」

「違わんっ!」

「違うもんっ!」

「違わ「あー、二人共落ち着き。」小春〜…。」


ホンマこの二人だけは顔会わせたら直ぐこれや、毎回仲裁に入らな何時までも続いてまうからなぁ…まぁ、それも案外楽しいから良えんやけど。

何て考えとったらユウ君と名前ちゃんがお互いの顔を見合わせてにやにや笑っとる。


「どないしたん?うちの顔に何か付いとる?」

「ううん。そうじゃないよ。」

そう云いながらも、顔はにやけとる名前ちゃん。

うちは、何隠してんねん。教えてくれへんこの口は悪い口や〜!云うて名前ちゃんとユウ君の頬をふにーっと引っ張る。

少なからず痛い筈なんやけどそれでも二人は楽しそうに(嬉しそう?)ふにゃって笑う、ホンマこの子等可愛うてせんないんやけど。


「よし、ユウジやりまっせ!」

「下手くそな関西弁使いよって…。まぁ、良えわ。」


いきなり名前ちゃんがユウ君に向けて慣れへん関西弁云うたかと思ったら、そんな名前ちゃんに冷たく当たりつつもユウ君は制服のポケットから何かを取り出す。

にゅっと取り出されたのは安全ピンのついた水玉のリボンやった。

うちがぼけっとしとる間にユウ君と名前ちゃんはお互いにそのリボンを付け合う。(ホンマ可愛えわぁ)

準備が整ったんか、うちの方に向き直り何故か一礼、うちもつられて一礼。

するとユウ君が、なぁ、名前、とにこやかに名前ちゃんに話し掛ける。

名前ちゃんも、何?ユウジ、と返す。

あ、成る程、二人で漫才する訳やんな、ほなら楽しませて貰いまひょか。


「ヤン坊マー坊天気予報の曲知っとるか?」

「うん!僕の名前は〜って奴でしょ?」

「そこまで云ったんなら全部云わんかい!まぁ、良えわ。それでな、俺案外あの曲好きやねん。」

「そうなんだ。じゃあ歌ってみましょう。」

「は?何で?」

「さん、ハイッ!」

「ちょ!あぁあ…。僕の名前はヤン坊!」

「僕の名前はマー坊!」

「二人合わせてヤンマーだー。」

「君と僕とでヤ・マ・ダ!」

「ちょお待てや!違うやろ!誰やねん、山田って誰やねん!」

「私の家のお隣さん。」

「知らんわっ!」


何ちゅーか名前ちゃん天然やから素のままやな、普通の日常会話から切り取ったみたいな柔らかい漫才に自然に笑いが溢れてくるわ。

一つのネタが終わり、うちが拍手しとるとユウ君がまた「名前。」と名前ちゃんに話し掛けた。

まだ何かやるんやろか?

不思議に思って拍手を止めると、それを合図にユウ君は話し出す。


「俺、ヤン坊マー坊天気予報の曲も好きなんやけど実は他にも好きな曲あんねん。」

「奇遇ですね、私もなのです!」

「ほなら一緒に歌おうや。同調すんで!」

「すんでっ!」


そう云って今度は名前ちゃんがポケットから何かを取り出す。

せやけど、普段の名前ちゃんからは考えられへん位の早さで物が引き出されて全然分からんかった。

うちが気になって首を傾げとるとユウ君と名前ちゃんが一緒に歌い出した。


「はっぴばーすでーとぅーゆー、」


あ。


「はっぴばーすでーとぅーゆー、」

「はっぴばーすでーでぃあ小春〜!」

「はっぴばーすでーとぅーゆー!おめでとう、小春ー!大好きー!」

「阿呆抜かせ!俺のがめっちゃ好きやで、小春ー!」


名前ちゃんは後ろに隠してあった物をうちの斜め上目掛けて打つ。

パン!っちゅー乾いた音に少し遅れて紙吹雪、クラッカーやったんかぁ思いながら満面の笑みで抱き着いてきとる二人を、うちは緩みきった顔のまんま目一杯ぎゅうっと抱き締めた。


(もう、ホンマ自分等可愛過ぎるやろ〜!)
(小春も十分可愛いよ!)
(名前!それは俺が小春に云う台詞やぞ、取んなやっ!)
(やー!)
(何やとー!)
((この子等、ホンマ見とって飽きひんわぁ…))
(あー!小春何笑ってんのっ)
(別に気にせんでも良えのよ。兎に角、二人共おおきになぁ)


2011/11/09 K.Koharu HappyBirthDay.
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