庭球 | ナノ
 


あの人は最低だ


見かけるたび他の女と歩いてる


あたしはあんたの


なんなのよ?



もう疲れた




だから…だから…




さよなら

 

「さいってい!!」


ああ、この言葉を聞くのは今日で何回目だろう。

女の人が走ってさっていく。

この光景を見るのも何回目だろう。

決まってこの後に千歳は携帯をいじる。


最低。


その言葉しか今のこの人にはあわないだろう。

何回も女と一緒にいては飽きたといって女を離れ
また別の女と探す。

『千歳はあたしのこと飽きてないの?』

あたしが千歳に聞くと千歳はふわりと笑って
あたしを抱きしめて首に顔をうずくめる。

「名前は1番に愛しとうよ」

優しい声が耳元でささやく。

ああ、これで何度目この言葉を聞いただろう。


―――――



「めずらしいばいね、名前が家にくるんわ」

驚いた様子で玄関を開ける千歳。
入りなといわないばかり玄関を開ける。



今日で決めた。



別れようって。



これでここに来るのも最後。




千歳の部屋は女の人の香水の匂いがする。
甘い香りに包まれたその部屋のあたしが付き合った当時から気に入ってる場所に座る。


「名前はそこが好きばいね。」

いつものふわりとした笑顔で言いながら紅茶を差し出す千歳。

『ありがと』

紅茶を一口飲んで机におく。
すこし空気が重くなって間があいた。
その沈黙を先に千歳が破った。

「名前…」

そういいながらあたしを後ろから抱きしめる。

「愛しとうよ」

『あたしはもう愛してないよ』

「俺は愛しとうよ、名前」

『あの…ねっ…』

「名前泣いとう?」

あたしの目から溢れている涙を千歳は後ろから抱きしめた状態で指で拭ってくれる。
温かい大きな手。

『泣いてない!離して』

「離さんよ」

『帰らして、もう帰る!!』

千歳の手をふりほどこうとする。
けど千歳はぎゅっとあたしを抱きしめる。

「名前が泣いてるのに帰せるわけがなか」


ああどうして

どうして優しくするの?

あたしのこの行動もこれで何回止められた?


別れよう


その言葉が言えないの

あなたが優しすぎて…

最低なあなたを愛してしまった

あたしも最低なのかもしれない



さよなら



言葉にできない



無口になったあたしに千歳は優しくキスをする。

『お願いだからあたしを置いていかないで』

「置いていかんとよ…」



その言葉がいえなくて
(あなたを深く愛してしまった)
(どんなに最低と知っていても)
(それでも傍にいたいのです)


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千歳好きな人ごめんなさい!
これはAcid Black Cherry様の「愛してない」を参考にさせていただきました!
歌詞から小説を作りたくなるんです←