庭球 | ナノ


「本日は卒業おめでとうございます」



ついにやってきてしまったこの日


あれから謙也くんと帰ることはなくあっという間に来てしまった卒業式


先生の長い話、送辞、答辞


どんどん行事は進行する


今まで一緒にいた子も学校が違う子が沢山いて、それを考えると涙がでてきた




ああ本当にもう卒業なんだね





「卒業生退場」



その言葉で1組から順番に抜けていく


拍手が飛ぶ中体育館を抜けると号泣する友達がたくさんいた

私もそのなかの一人だった


卒業アルバムにメッセージを書いたり写真を撮ったりする中で謙也くんを探す自分にああやっぱ好きなんだなって実感もしたりした



『あ、謙也くん』

「お!やっと見つけたで!」

『え?』

「これ書いてーや!」


渡されたのは卒業アルバムできっとクラスの男子であろう子の字でほとんどうめつくされている


「あんまスペースないけど…」

申し訳なさそうに言う謙也くんにそんなことないよといって自分のも彼に渡す

『うちのも…』

「おう!書くわ!」


そう言って手持ちの油性ペンをくるくる回しながら「んー」と言って内容を考える彼を隣に自分も内容を考える
でも言いたいことは書ききれないから…


さらさらっと書いていると謙也君はできた!と言って卒アルを渡してきてくれた


『あ、ちょっと待ってな…』

「えーよえーよ」

『…しょ、と、できた!』

「おーきに!」


そう言って笑顔でアルバムを渡してくれる彼に心がきゅーっと苦しくなる


「ほな…」

そう言って立ち去りそうになった謙也くんの裾を慌てて掴む

「うお!」

『ご、ごめん…!』

「えーよえーよ!どしたん?」


嫌な顔ひとつせずに尋ねる謙也くん


ここで勇気ださなきゃ…!


『あ、あのね、よかったら、一緒に、かえ…』

「おん、えーで!帰ろや」


思いがけない言葉に思わず目をぱちぱちさせる



「あ、でも部活で一回集まるから帰んの遅くなるかもやねんけど…」

『ま、待ってる!校門で!』


そういうと謙也君はにこっと笑ってくれた


「ほな部活の終わったら急いで行くわ」

『あ、ゆっくりでいいよ!』

「スピードスターにゆっくりは禁物や!」


そうだねって言って笑うと謙也君もまた笑ってくれた


「ほな、またあとでな!多分3時に終わるわ!」

『じゃあ、3時ごろにいるね』



そう言って手を振れば謙也君は白石君を探して行ってしまった



3時までの間沢山の人と写真を撮ったり卒アルをかきあったりした



時計を見れば2時45分



『あ、じゃあうちそろそろ…』


「かえんの〜?」


『うん』


「忍足君とやろ?」


『…!』

「いや、そんな顔真っ赤にせんでも…」

「名前、ちゃんと気持ち伝えやなあかんで」

「せやで、絶対後悔するで〜」

「最後のチャンスやねんやから!」


うちのことをわかってくれる友人が背中を押す

せやな…


これで最後やもん…



気持ち伝えよう



記憶の断片にあるあなたの笑顔


(このままで終わりたくない…)