50000HITアンケート企画結果
『学校・ギャグ・女装』

大学生鬼不設定(春夏秋冬後)です…が、キャラ崩壊してますのでご注意を(笑)








ありのままで







学園祭シーズン。
この時期ほとんどの学校が学園祭一色に染まる。そんな中、鬼道も他大学に訪れていた。源田と不動、それから佐久間の居るサッカー部の店に行くためだ。ちなみに佐久間はそれまで所属していたサッカー部を辞めて今は不動たちと共に活動しているらしい。

「本当に良かったのか、付き合ってもらって」
「別に構わない」
そう言ってフランクフルトに齧りつく豪炎寺は、相変わらずの無表情で『サッカー男子☆魅惑の女装喫茶☆』と書かれたチラシを凝視している。その横顔を盗み見て、鬼道は眉間にしわを寄せた。完全なる人選ミスだ。
「…ここか」
後悔先に立たず。来てしまったからには顔を出さずに帰る訳にもいかない。ゴテゴテの装飾は普通の教室を異空間へと変貌させている。悪趣味なおもむきに鬼道は思わず一歩後ずさりしてしまった。その時、低音のよく響く声が二人の名を呼んだ。
「鬼道!豪炎寺!来てくれたのか!」



そこに居たのはチャイナ服の源田だった



鬼道はこの時ほど逃げたいと思ったことはない。端整過ぎる顔立ち、力強い眼差し。鍛え上げられた両足がスリットから見え隠れし、惜しげもなく晒された両腕の逞しさたるや、同じ男として見惚れるぐらいだ。しかし、それらが全て鮮やかな青色のチャイナ服に包まれているとなれば話は別である。
「げ、源田…元気そうだな」
「あぁ!元気過ぎるぐらいだ。さぁ入ってくれ、2名様ご案内!」
「…ぁいよー…って、ッげぇ!マジで来やがった」
店内に足を踏み入れると、セーラー服を着た不動に遭遇した。筋肉質な両足はニーソックスで覆われていてさほど気にならない。髪の毛はそのまま、化粧も一切していなかった。鬼道は、席に案内されながら、不動の後ろ姿をまじまじと見つめる。
「不動はあまり手を加えていないのか」
「せめてカツラを被ったらどうだと言ったんだがな」
「はぁぁ?ぜってぇ嫌だ。ばっかじゃねぇの。着てやっただけでも感謝しやがれ」
源田の言葉に対して不動は露骨に機嫌を損ね、振り向きざま手に持っていた台布巾を投げつけてきた。スカートがひらりと大きく揺れ、下に履いているスパッツが覗く。鬼道は反射的に目を逸らした。
次の瞬間、ダン!と壁を叩く音がして

「甘い!だからお前は二流なんだよ!」

ゴシックロリータの佐久間が吠えた。
「な、テメェ今なんつった!おい!!」
「水臭いじゃないか、鬼道!今日来ると知っていたらもっと気合いを入れたものを!」
それ以上気合いを入れるのか?と、全員が顔を引きつらせた。佐久間の眼帯は服に合わせてレースがあしらわれ、髪は愛らしいツインテール、化粧まで完璧に施されている。声を聞かなければ100%女だと勘違いするだろう。その無駄にクオリティの高いロリータファッションをどう評すればいいのか分からず、始終無言の豪炎寺に代わって鬼道は適当な賛辞を呈した。
「よくわからんが、似合っているぞ」
「当然といえば当然だな。やるからには徹底的に、何事にもこだわり尽くす。それが俺のポリシー!」
一方、不動は佐久間にスル―されたせいで苛立ちながら、黙々とテーブルの上を拭いていた。与えられた職務に関しては、陰ながらきちんと全うするのが不動の性格である。
「不動ぉお!お前も男なら度胸を見せろ!そのねじ曲がった根性を叩き直して完璧な女にしてやる!」
こうなると、もはやただの変態だ。佐久間は、わめき散らす不動をガッシリと羽交い絞めにしてずるずると入口へ引きずっていく。恐ろしい光景だった。セーラー服とゴスロリの成人男子が怒鳴り合い、本気で取っ組みあっている姿は想像を絶する。
「来い!まずは全身の無駄毛という無駄毛をそり落とす!」
「上等だ糞野郎!そのうっぜぇ長髪毟り取ってやらぁ!」
鬼道は二人を止めようと腰を浮かせたが、何の役にも立てずに終わった。





不動が強制連行されてどれぐらい経っただろう。
豪炎寺は手洗いに行くと言ったきり戻ってこない。出されたお茶も飲み終わってしまい正直やる事が無くて、ただただ気まずい時間が過ぎて行くだけだ。この調子だと豪炎寺は迷子になっているな、と鬼道が心配し始めた頃、獣のような唸り声とともに不動が戻って来た。
長い茶髪のカツラに、可愛い髪飾り。うっすらと化粧もしている。両手両足の無駄毛は無事生き残ったようだが、かなり押さえつけられたらしく、腕には指圧による内出血の跡が残っていた。
「……チッ」
不動は舌打ちをすると、豪炎寺が座っていた席に腰を下ろし、テーブルに頬杖をつく。明らかに機嫌の悪い男を目前にして、鬼道はたじろいだ。
「お、かえり」
「……………どう?」
「…え?」
「女装。どう、って聞いてんだよ」
「あぁ…まぁ、いいんじゃないか」
歯切れの悪い鬼道に、不動は無言のまま片方の眉を上げて見せる。先を続けろ、という意味らしい。鬼道は無性に喉が渇いて、何も残っていない紙コップの中を覗き込んだ。ここで嘘をつくと碌な事にならない。それだけはわかった。
「すまん。俺はやはりいつもの不動の方がいい。女装したお前は別人みたいで、なんだか…居心地が悪い」
「ふぅん…」
「………」
数秒の沈黙が訪れ、鬼道の背中をツと汗が流れたころ。

「悪くない答えだ、鬼道くん」

不動がニヤリと笑った。美しいビリジアンの瞳が細められ、リップグロスで濡れた唇が弧を描く。切れ長の一重瞼はラインで強調され、えも言われぬ色気をかもし出していた。髪の毛を鬱陶しそうに払う仕草すら妖艶で目が離せない。純粋にその美しさに惹かれ、綺麗だ、と思わず口からこぼれそうになる。
「女装もいい、なんてマジで言おうもんなら今晩はアンタにこれ着せて朝まで犯してやろうと思ってたんだけど」
「…っ゛」
鬼道は慌てて言葉を飲み込んだ。不動が戻ってきてからずっと嫌な予感がしていたが、これだったのか。セーラー服で犯されるなんてトラウマものである。
「気が変わった。晩飯、好きなもん作ってやる」
「本当か?なら、この間食べたコロッケがいい。あの、中身がクリームで、」
「あーアレね。…まぁ、メインは食後のデザートだけどな」
言葉に含まれる他意を、鬼道は瞬時に理解したがあえて何も言わなかった。それは誘い文句であり、要するに“今晩OK”のサインなのだ。不動は席を立ち、仕事へと戻って行った。

携帯電話を開くと、着信20件。サイレントに設定されているせいで、電話に気付けなかった。
「………豪炎寺…」
鬼道は、いまだ校内で迷子になっているであろう豪炎寺を探す為、早々に会計を済ませ店を出た。

自然と顔が綻ぶ。





今夜のデザートが楽しみだ。







END




ナチュラルに同棲設定を混ぜ込んでみた鬼不でした。女装モノってあまり好きではないのでこういう展開に(笑)50000HITありがとうございました!これからもよろしくお願い致します。


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2010/10/12