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「"麦わらのルフィ"及びその子分共!!!
大人しく降伏しろォ!!!」

海軍が広場を包囲する。
偽物の麦わらの一味を本物だと勘違いした海軍は、シャボンディ諸島に包囲網を敷いたようだ。

「海賊共を討ち取れェ〜〜〜!!!」

海兵が銃や刀を構えて迫ってくる。

「おれ達のボスは4億の男!"麦わらのルフィ"だぞ!!」
「迎え討てェ〜〜〜〜!!!」

海賊達も応戦する。
広場はあっという間に乱戦状態だ。

「おいバカ共!勝手に暴れんじゃねェ!!!」

偽ルフィが叫ぶが、海賊達にその声は届かない。

「私達も早くここから離れないと」

シャオリーはルフィのマントを引っ張る。
こんな戦いに巻き込まれていたら、レイリーのところへ行けない。ここは、混乱に乗じてさっさとこの場から離れるのが一番だ。

「ちょっと!どこ行くのよ!?
一人で逃げる気!?」

偽ナミが、シャオリーのマントを引っ張る。
シャオリーがその手を振り解こうとした、その時。

「ギャア〜〜〜〜!!!」

一際大きな悲鳴が聞こえてきた。
同時に、大きな爆発音も。

「パシフィスタだァ!!!」

パシフィスタが2体、広場に現れた。
そのうちの1体が、こちらの高台へと顔を向ける。

「海賊"麦わらのルフィ"、"堕天使"シャオリー、確認」

「(バレた…!)」

パシフィスタのスキャナーに誤魔化しは効かない。シャオリーとルフィの存在はハッキリと認識されてしまっている。

「パ、パシフィスタ…! 本物か!?
今、おれに狙いをつけた!!」

偽ルフィは顔を真っ青にする。パシフィスタに、自分が本物だと認識されたと勘違いしたらしい。
パシフィスタは海賊達を薙ぎ倒し、レーザー光線で周りを所構わず吹き飛ばす。集まった海賊の中には名のある者もいたが、それらが束になってもパシフィスタには傷一つ付けられない。

「急げ!ズラかるぞ!!」

適わないと悟り、偽ルフィは慌てて逃げ出す。他の偽物達もその後を追った。
しかし、その行く手を一人の男が阻む。

「あっ、あの人…!」

その男には見覚えがあった。
大きな鉞を担いだその男は、確か名を戦桃丸といった。2年前にも、このシャボンディ諸島で出会った。

「うおお! 麦わらの大頭が戦ってくれるぞォ!!」
「やっちまえ〜!!」

戦桃丸と対峙している偽ルフィを見て、海賊達が嬉しそうに叫び出した。
偽ルフィはギクリと体を強ばらせ、戦桃丸は怪訝な顔をして周りを見回す。

「……? 何でおめーが"麦わら"と呼ばれてんだ」

さすがに本物に出会ったことがある彼には、目の前の相手が偽物だと解るようだ。

「オイてめェ!!おれが誰だかわかってるよな!?
ぶっ殺されて腸引きずり出されたくなきゃあ道を空けろ!!」

偽ルフィが全身から汗を流しながらも、脅し文句を垂れ始める。

「おれはドラゴンの息子で!ガープの孫で!懸賞金4億の…」
「"麦わら"はおめェみてェなカスじゃねェよ!!!」
「ホブーーーーーーーー!!!」

鉞を脳天から叩き付けられ、偽ルフィはペチャンコに潰れた。

「「 ええええ〜〜〜〜っ!? 」」

海賊達が絶叫する。
あまりにも弱い、というよりカッコ悪い。

「成程。コイツら全員ニセの"麦わらの一味"に騙されてたんだな。
PX-5、コイツは誰だ?」
「懸賞金2千600万ベリー、海賊"三枚舌のデマロ・ブラック"」
「偽物!?」

ようやく真実が明るみになり、騙されていたと知った海賊達は口々に怒りの声を上げる。
他の偽物達はさっさと逃げ出したが、ルフィとシャオリーは高台に残ったまま成り行きを見守る。

「え? あいつら、おれのマネしてたのか?
あのゾロとかサンジとかすっげェ似てんな〜」

やはりルフィも気付いていなかったようだが、今はそんなことどうでもいい。

「いいから早く行こうよ、ルフィ」

シャオリーはルフィの腕を引く。
しかし数歩も歩かない内に、逆にシャオリーはルフィに腕を引かれた。体を抱き寄せられヒョイと持ち上げられたかと思うと、横抱きにされた。
同時にレーザービームが襲ってきた。

「わっ!?」

ルフィはシャオリーを抱えてジャンプし、レーザービームを避けた。しかしその拍子に、マントと付け髭が落ちてしまった。

「あっぶねェっ! いきなり何すんだ!!」

ルフィは着地すると、ぷんすか怒った。

「「 !?!?!? 」」

海賊達は口をあんぐり開けて絶叫した。

「「 手配書と同じ顔ォ〜〜〜ッ!!!!! 」」

でかいリュックを背負った小僧が"本物の麦わらのルフィ"だと知り、広場には衝撃が走った。
それに加え、偽物達はシャオリーも本物の"堕天使"だと知って、恐怖で泡を吹いている。

「ルフィ、ヒゲ取れちゃってるよ」
「あり? ホントだ」

正体がバレたら騒ぎになり、出航しづらくなる。だから大人しくするように。
ハンコックから口酸っぱく忠告されていたのに、結局こうなるのかとシャオリーは小さく息を吐いた。

ルフィはシャオリーを地面に下ろすとリュックを背負った。
シャオリーも、もう正体を隠す必要がなくなったのでマントを脱ぐ。

「"麦わら"に"堕天使"…!
2年前はくま公のせいで取り逃したが、今回はそうはいかねェ。
お前らはここで捕まえる!! やれPX-5!!」

パシフィスタが掌からレーザービームを放つ。
しかし、ルフィは首をくいっと傾けただけでそれを避けた。

「"ギア2"」

右腕から煙が吹き出す。この2年で、ルフィは体の一部だけに"ギア2"を発動できるようになった。
ルフィは地面を蹴り、パシフィスタの頭の上へ飛んだ。

「"ゴムゴムのJET銃"!!!」

パシフィスタは頭を潰され地面に叩き付けられた。そして爆発し、跡形もなく粉々に砕け散った。
2年前は一味全員でやっと1体倒せた相手を、ルフィはたった一撃で撃破してしまったのだ。
ルフィの変化に戦桃丸は驚愕し、周りで見ていた海賊達は驚きで声も出ないようだ。

「ししし!ほんじゃな!
お前とはまたどっかで会いそうな気がする」
「ッ、待て! PX-6!!」

ルフィはリュックを背負って走り出した。
我に返った戦桃丸が、2体目のパシフィスタに命令を下す。パシフィスタがルフィの行く手に立ち塞がった。
ルフィが拳を構える前に、シャオリーは前に躍り出た。

「私がやる」

シャオリーの背中から真っ白な翼が生えた。
そして眩い光の弓矢をパシフィスタへ放つ。矢は真っ直ぐ、パシフィスタの開いた口を貫いた。パシフィスタの頭からバチバチと火花が散る。
シャオリーはパシフィスタの頭上まで飛ぶと、再び光の矢を構えた。

「"聖なる矢"!」

光の矢は、パシフィスタの脳天に直撃した。そしてパシフィスタの体を上から真っ二つに裂いた。
次の瞬間、パシフィスタは爆発した。

「シャオリーも強くなったなァ!!」
「ルフィ程じゃないよ」

謙遜するが、内心シャオリーは嬉しかった。2年前は首を飛ばすだけで精一杯だったが、今は一人で簡単に倒す事ができる。
シャオリーがルフィの隣に着地すると、爆煙の向こうからこちらに駆け寄ってくる二つの影が見えた。

「おいルフィ!!この騒ぎはやっぱりてめェか!!」
「シャオリーちゅわァァ〜ん!!! 可愛さと強さに更に磨きがかかってるねェ〜〜〜ッ!!!!」
「ゾロ! サンジ!」

影の正体は、ゾロとサンジだった。
シャオリーとルフィに満々の笑みが浮かぶ。

「うわー!今度は間違いねェ!!
ひっさしぶりだな〜〜〜!!お前らァ!!」
「二人とも!会いたかった〜〜!!」

シャオリーは二人に抱きついた。ゾロは背中をポンポンと撫で、サンジは鼻血を垂らしながらメロリンした。

「お前ら二人が最後だぞ。9番と10番だ。
もうみんな船で待ってるからな」
「一番最初に着いたからってどんだけ自慢なんだよ!」
「ゾロが一番だったの? めずらしー」
「嬉しいな〜〜2年振りだな〜〜〜!!」

わいわいと喋りながら走り出す。しかし、数歩も行かない内にルフィが立ち止まった。

「どうした、ルフィ」

ルフィはとある一点を見つめ、嬉しそうな顔をする。そして、その名を呼んだ。

「レイリーーーーーー!!」

少し離れたマングローブの上。胡座をかいて座っているその人物は、他でもないシルバーズ・レイリーだ。

「フフフ… 一応様子を見に来たが、問題はなさそうだな」

レイリーは、半年前にルフィと別れていた。
弟子の成長を見ておこうと、騒ぎの起きているこの広場までやって来ていたようだ。

「レイリー!2年間、いろいろありがとう!!」
「……改まる柄じゃない。早く行け」

ルフィはリュックを下ろした。

「レイリー、おれはやるぞ」
「?」

ぐっと拳を握り、天に突き上げる。

「"海賊王"に!! おれはなるっ!!!」

シャオリー、ゾロ、サンジの顔には笑みが浮かぶ。
レイリーもその言葉を噛み締めるように嬉しそうな顔をしたが、その目には涙が光っているように、シャオリーには見えた。

「"麦わら"を討ち取れェ〜〜!!」

海兵が追ってくる。
4人は再び走り始めた。

「おっと。 じゃ、レイリー!本当にありがとう!
行って来る!!!」

笑顔のルフィに、レイリーはすぐには答えなかった。
何かを思い出しているような、彼に何かを重ねて見ているような、そんな間があった。

「頂点まで行って来い!!!」

レイリーの声を背中で聞き、シャオリーたち4人はサニー号へと向かった。


***


サニー号が停めてあるという42番GRまで、4人は走る。
海兵達が追ってくるが、シャオリー達は応戦せず逃げに徹している。
今は一刻も早くサニー号へ到着する方が先だ。

「こっちだァ!!」

すると前方から海兵達が現れた。進路を予測され、挟み撃ちにしようという魂胆だ。

「やべェ! 挟まれた!!」
「くそっ」
「こうなったら戦うしか…」

ゾロとシャオリーが戦闘態勢に入った、その時。

「おーーーーい!!」

チョッパーの声がした。

「あそこだ!上だ!!」

海兵の誰かが叫び、上空を指さす。
巨大な鳥が、シャオリー達の上空を旋回していた。鳥の背にはチョッパーが乗っており、こちらに手を振っている。

「チョッパー!!」
「迎えに来たぞ〜〜〜!!」

鳥が下降し、4人は各々地面を蹴って鳥に飛び乗った。
海兵達が発砲してくるが、ルフィがそれを弾き返す。
全員が乗ったことを確認し、鳥はバサバサと大きな翼を羽ばたかせて空へと上昇した。

「ルフィ〜〜!!シャオリー〜〜〜!!
久しぶりだな〜〜〜っ!!」
「久しぶり〜〜っ!!」
「チョッパー!助かったよ!」

シャオリーはぎゅーっとチョッパーを抱き、ルフィはそのシャオリーの後ろから2人を抱きしめた。

「他のみんなももうサニー号に集まってるぞ!」
「うわ〜〜!みんなに会うの楽しみだな〜〜〜!!」

すると、鳥が減速した。サニー号に着いたようだ。
下を覗き込めば、前と変わらない姿のサニー号と、大切な仲間が揃っている光景が広がっていた。

「うおーーー!!みんな〜〜〜〜〜!!!」
「ルフィ!! シャオリー!!」
「ゾロ! サンジ〜!!」

シャオリーは、滲む視界を消すように目を拭った。
この2年間、何度も夢に見た。
誰一人欠けることなく、こうして全員がまた集まることができた。

"麦わらの一味"は、再集結を果たした。


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