06
最近、文次郎と光ちゃんの仲が良い。
食事のときも、休み時間も、夜の鍛練のときも、よく一緒にいる。

光と一緒にいるときの文次郎は、とても嬉しそうだ。
楽しそうに笑う二人を見て、花の胸が疼く。キュ、と締め付けられて苦しいのに、どこか心が温かくなる。

「(…?)」

2人が仲良くしているのを見るのはつらいのに、文次郎の笑顔を見ると心が温かくなるのだ。

夜、花は文次郎と仙蔵の部屋を訪ねた。

「仙蔵、いる?」
「あいつなら風呂だぞ。どうした?」

髪を下ろして寝巻き姿の文次郎が答えた。

「借りてた本を返そうと思って…今夜は鍛練しないんだね」
「ああ、毎晩鍛練じゃ光の体力が持たんからな」

あ、名前…

「文次郎、ずっと光ちゃんに付きっきりだもんね」

呼び捨てだ

「素質があるみたいでな、教え甲斐があるんだよ」

文次郎は、また嬉しそうに笑う、

「そう…。よかったね」

ああ、そうか

「文次郎は、」

苦しいのに、悲しいのに

「光ちゃんのこと、」

心が温かくなるのは

「大好きなんだね」

文次郎が、幸せだからか

「なっ、何を言い出すんだバカタレ! お、俺が、光を…!?」
「バレバレだよ。文次郎、わかりやすいもん」
「なっ…!」

文次郎が幸せでいてくれることが、私は幸せなんだ

「告白、しないの?」
「す、するわけないだろ!色に溺れるようなことになれば、忍者として失格で…」
「大丈夫だよ!!」

思わず花は大声を出した。

「大丈夫…文次郎なら、溺れたりなんかしない」

だって、

「学園で一番忍者してる男が、恋人ができたくらいで揺らぐと思うの?」

色(あなた)に溺れてるのは

「文次郎なら、大丈夫だよ」

私の方だから

「花…」
「私、応援するから。何かあったら助けるから。だから、諦めないで」

何があっても、絶対に……

「…………」
「…………」

沈黙が続く。

「(………よ、)」

余計なこと、言っちゃったかな…!?

「(大きなお世話だ、とか思われてたら…どうしよう…)」

花が内心焦っていると、足音が聞こえ、仙蔵が戻ってきた。

「花?」
「あっ、仙蔵!よかった、これ返そうと思って」

花は仙蔵に本を渡す。

「あ、そ、それじゃあ…おやすみなさい」

花はそそくさと廊下に出た。

「花」

戸を閉めようとすると、文次郎が呼び止めた。

「ありがとな」

いつものあの笑顔で文次郎が笑う。

「………うん」

その笑顔は決して自分のものにはならないと知り、花の胸はまた痛んだ。

「(色に溺れる、か…)」

花はふと空を見上げる。
花の心を写したかのように、空はどんよりとした雲で覆われていた。


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