03
光は花と同室になった。元々花は一人だったし、同じクラスとなったのだから当然だ。
「よろしくお願いします、花さん」
「うん、よろしくね。あの、敬語じゃなくていいよ?」
「いいえ! いくら同い年とはいえ忍術の先輩ですから」
「う、うん…」
腑に落ちないが、花は仕方なく承諾した。二人は食堂に向かっていた。もうすぐ夕飯の時間だ。
「おばちゃん、から揚げ定食2つ!」
「はいよ! あら、その子が編入生ね?」
「はい、光です」
二人が定食を受け取ると、後ろから声がかかった。
「花!光!一緒に食べよう!」
奥の机で六年生が集まっていた。
「みんなお揃いで…珍しいね」
「あー、まあ…こういうことだよ」
伊作が光の方を指す。
「どこから来たの?」
「編入する前は何をしてたんだ?」
「この年で編入なんて珍しいけど、何か理由があるのか?」
光は質問攻めにされている。
「なるほど」
花はもぐもぐとから揚げを頬張る。
ふと隣を見ると、文次郎がまたもや光のことを見つめていた。
「話しかけないの?」
小声で文次郎に声をかける。
「なっ、なにがだ!?」
「光ちゃんに。声かければいいのに」
「バ、バカタレィ!なぜ俺があいつに…」
顔を赤くしながら、文次郎は何やらゴニョゴニョ言っている。
「(ほら、また…)」
私の知らない顔をする
「だ、だいたい美少女がいるからなんだ!忍者たるもの、色に溺れるということは…」
「三禁、ねぇ…」
"忍者の三禁"
文次郎は昔からずっとそれを守ってきた。
何にも真っ直ぐなあなただから、それを邪魔したくない。
私のせいで、邪魔をしたくなくて、ずっと我慢してた。
重荷になるようなことはしたくなかったから…
「……我慢はよくないよ。話すだけなら、三禁を破ることにはならないでしょ」
花は精一杯の笑顔を見せた。
「仲良くなれるといいね」
「お、おう」
文次郎も表情を緩めて応えた。
その笑顔に、また胸が痛んだ。
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