02
忍術学園の門は、登校する忍たまのために大きく開かれていた。
その門の前に、見知らぬ女の人が立っていた。中の様子を伺っている。

「何か用か?」

文次郎が女の人に声をかける。女の人はハッとしてこちらを振り向いた。

「(わ、美人さん…)」

容姿端麗とは、まさにこの人のことだろう。
女の人は花や文次郎と同じくらいの年齢に見える。質の良い着物を着ているので、それなりに裕福な人のようだ。

「あの、お二人は忍術学園の方でしょうか?」
「そうですけど…」
「ああ、よかった…! 私、今日から忍術学園に編入するんです」
「編入生か、珍しいな」

三人は一緒に門をくぐった。

「入門票にサインをお願いしまーす!」

お約束の小松田さんがやってきて、三人はサインした。

「光?」

女の人が名前を書くのを見て、花が聞いた。

「はい、光と申します」
「編入生の方ですね、ご案内します」

光は小松田さんと一緒に職員室の方へと消えた。
花と文次郎は六年長屋に向かう。

「光ちゃん、綺麗な人だったね」
「ああ」
「同い年くらいに見えたけど、どのクラスになるのかな?」
「さあな…」

文次郎は生返事、しかも上の空。
なんだか、いつもと違うような…
花は、そんな文次郎の横顔をじっと見つめた。

着替えを済ませ、学期初めの朝礼のために運動場へ向かった。

「おはよう、花ー!久しぶりだな!」

犬がじゃれつくように、小平太が花に飛びついてきた。その拍子に伊作にぶつかり、伊作は落とし穴へ…

「おはよう小平太。伊作ごめん…大丈夫?」
「だ、だいじょぶ…」

新学期になっても、この人たちは何も変わらないようだ。

「忍たま諸君!また新しい学期になり……」

学園長の挨拶が始まる。何一つ変わらない、いつもと同じ風景。

「さて、今日は編入生を紹介する」
「6年い組に編入することになった、光です。よろしくお願いします」

美少女の出現に、周りがざわつく。

「光ちゃん、同じクラスだね」

隣にいる文次郎に言う。

「ああ…そうだな」

文次郎はじっと光を見つめている。その表情は、どこと無く穏やかだ。

いつもと同じだと思った。
何も変わらないと思っていた。

でも、1つだけ違った。

「(こんな文次郎の顔、初めて見た…)」

疑惑が確信に変わったのを、花は感じた。
ちくり、と胸が痛んだ気がした。


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