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部屋に戻ろうと廊下を歩いていくと、ある部屋から人の話す声が聞こえた。

「(職員室だ…)」

先生たちが会議でもしているのだろうか。音をたてないようにそっと通り過ぎようとすると…

「ツキヨタケ?」
「!」

花の足がピタリと止まった。

「理由はよくわからないのですが…近い内に学園を攻めるという情報が」
「学園長を狙ってか?」
「恐らく…」

学園長を狙って、ツキヨタケが攻めてくる。

「嘘…」

どうして…
光ちゃんの忍務は…?

「ご苦労だったな、利吉」
「では、私はこれで」

戸が開いて、利吉が出てきた。そして、その足がピタッと止まる。

「え……花ちゃん?」

まさか誰かに聞かれているとは思わなかったらしく、利吉は驚いて一瞬固まった。中にいる山田先生と土井先生も驚いていた。

「利吉さん、先生…ごめんなさい、立ち聞きするつもりは…」
「とりあえず入りなさい」

山田先生に言われ、花は職員室に入った。

「あの…今の話…本当、ですか…?」

誰も答えない。それでは肯定しているのと同じだ。

「じゃあ本当にツキヨタケが…。いつ、ですか…?」
「……はっきりしないが、あと一週間くらいだよ」
「一週間…」

もう、すぐだ。

「花、このことは誰にも…」
「はい、わかってます」

言えないよ、こんなこと。

「前以てわかっているなら、奴らが学園に来る前に手を打っておくべきでは…?待ち伏せする、とか」
「私もそう思う。しかし、ツキヨタケは強い。罠や仕掛けの類は通用しないだろう」
「それに、学園にはツキヨタケのスパイが潜入しているという噂もある」
「!」
「そのスパイや他の生徒に感づかれないように、小数の方がいい。そして、それなりの腕でなければ…」

ツキヨタケが学園を襲ったら、たくさんの怪我人や死者が出るだろう。
学園長は殺され、そして光も殺される。
文次郎が、悲しむ…

学園が、友人が、大切な人が、いなくなってしまったら
また私は、ひとりになるかもしれない

「………私じゃ、ダメですか?」

三人の顔に衝撃が走る。

「私じゃ…全然力もないし、奴らを倒すことなんて無理かもしれない」

こんな私でも

「でも、じっとしてられない」

まだ、できることがあるのなら

「私一人で片付くなら、安いでしょう?」

もう、ひとりはいやだよ

「私に、行かせてください」


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