07
「仲間になってくれんのかよ!!」
「やったー!ゾロが仲間になった!」

ロロノア・ゾロが仲間になり、シャオリーとルフィは二人でわいわいと盛り上がる。しかし、それも束の間。

「……身分も低い、称号もねェ奴らが」

倒れていたモーガン大佐が、ゆっくりと立ち上がった。

「全員死刑だ!!」

降り下ろされた斧を、ルフィが殴って弾いた。その隙に、シャオリーは羽を飛ばしてゾロの縄を切った。
ルフィとモーガン大佐の攻防は続く。が、勝負はルフィのペース、モーガン大佐は防戦一本だ。

「モーガン大佐が…一方的に…!?」
「つ…強すぎる…!」

コビーや海兵たちは、ルフィの強さに驚愕している。海兵の中には、心なしか嬉しそうな表情をしている人もいた。
ついに、地に背をつけたモーガン大佐の胸ぐらをルフィが掴む。

「なにが海軍だ。コビーの夢をブチ壊しやがって」

右手で拳を握り、構える。そのとき、

「待てェ!!」

チャキ、シャオリーのこめかみに当てられた銃口。(お構い無く、ルフィは大佐を殴ったけど…)

「こいつの命が惜しけりゃ動くんじゃねェ!ちょっとでも動いたら撃つぞ!!」
「ヘルメット…!」
「ポだァ!」

シャオリーは人質にされたらしい。しかし、シャオリー本人はそんなものになる気はさらさら無かった。

「無駄だよ。こんなものじゃ、ルフィは止められない」

銃口を掴んで自らのこめかみに当てたまま、シャオリーは言った。
シャオリーに見つめられてヘルメッポは少し頬を紅く染めたが、シャオリーの目には映っていない。
私なんかの命じゃ、ルフィを邪魔することはできない。

「それでもいいなら撃ちなよ。ね?」

シャオリーはにっと笑った。それを見たルフィも、ししっと笑う。

「諦めろ、バカ息子。シャオリーの覚悟は本物だぞ」
「お、おいてめェ!動くなっつったろ!」

ルフィは"そこ"からヘルメッポを殴るつもりらしい、右腕を構える。しかし、その背後には…

「おれは海軍大佐だ!」

モーガン大佐が、右腕の斧を大きく振り上げて立っている。

「ルフィさん、後ろ!!」
「ゴムゴムの…銃!!」
「!? 親父、早くそいつを……ぶほっ!!」

再び顔を殴られてぶっ飛ぶヘルメッポ。と同時に、

「ナイス、ゾロ」

振り上げた右腕もそのままに、モーガン大佐はゆっくり後ろに倒れた。気を失っているようだ。

「お安い御用だ、船長(キャプテン)」

刀をゆっくりと下ろして、ゾロが笑った。

「シャオリーさん!大丈夫ですか?」
「うん、平気平気」

駆け付けたコビーに、シャオリーは笑顔で応えた。

「やったァーーーーっ!!」
「モーガンの支配が終わったァ!!」
「海軍バンザーイ!!」

うおおお、と歓声を上げて海兵たちが喜び出した。モーガン大佐の恐怖から解放されたかららしい。

「大佐やられて喜んでやんの」
「変なの」

そのときゾロが、まるでスイッチが切られたように倒れてしまった。

「ゾロ!?どうした?」
「ゾロさん!」
「……あ、」

そういえば、ゾロって………

***

「はァ、食った…!!さすがに9日も食わねェと極限だった」

満面の笑みで腹を撫でるのは、"魔獣"と呼ばれた男。イメージとは対照的な表情に、窓の外の町民たちはざわめきながらこちらを見つめる。
リカの家で、シャオリーたち4人はご馳走になっていた。

「やっぱりお兄ちゃんたち、すごかったのね!」
「おう!もっとすごくなるぞ!」
「それで、ここからどこへ向かうつもりだ?」
「"偉大なる航路"へ向かおう」

答えたルフィは、至極当然という口調だ。シャオリーもうんうんと頷いたが、やはりと言おうか、彼の叫びが。

「ま、また無茶苦茶な!まだ3人なのに"偉大なる航路"へ入るなんて!!死にに行くようなもんです!!」
「でも"ワンピース"を目指すなら、ね」
「ああ、どのみち行くしかねェんだ。いいだろう」
「ちょ、ちょっと!お二人とも!」
「別にお前は行かねェんだろ…?」
「い、いか、行かないけど!心配なんですよ!あなた達の心配しちゃいけませんか!?」

コビーは両手で机をバンバン叩いた。おお…意外と熱いところもあるんだね、コビーって…

「ルフィさん。ぼくら…付き合いは短いけど、友達ですよね…?」
「ああ、別れちゃうけどな。ずっと友達だ」

笑顔で答えたルフィに、コビーは本当に嬉しそうな顔を見せた。それは、どこか心が救われたような、そんな表情にも見えた。

「ぼくは…小さな頃からろくに友達もいなくて…ましてやぼくのために戦ってくれる人なんて絶対いませんでした。何より、ぼくが戦おうとしなかったから…!!
だけどあなた達3人には…自分の信念に生きる事を教わりました!!」

そう言ったコビーの顔は、強い"信念"で満ちていた。コビーは、これから海軍に入って、偉くなって…

「あっ、でもコビーは大丈夫なの?たまたまだとしても、海賊船に乗ってたことがバレたら…」
「失礼!」

玄関が開き、外には海兵がずらりと並んでいた。

「君らが海賊だというのは本当かね」
「仲間も増えたことだし、今から海賊って事にしよう!」
「そういうもんなの?」
「反逆者としてだが、実質基地と町を救ってくれたことには感謝している。しかし君らが海賊であるなら、海軍として黙っている訳にはいかない。即刻、この町を立ち去ってもらおう」
「おい海軍っ!何だその言い草は!!」
「我々の恩人だぞ!!」

見物していた町民達からはブーイングが飛んだ。しかし、海兵の言っていることは間違っていない。

「じゃ…行くか」
「おばさん、ごちそうさまでした。リカちゃん、またね」
「お姉ちゃん達、もう行っちゃうの?」

シャオリー、ルフィ、ゾロは席を立ち、外に向かって歩き出した。しかしもちろん、コビーはその場から動かない。

「君は仲間じゃないのか?」
「え!ぼく…ぼくは…!」

海兵に尋ねられ言葉に詰まった後、振り絞るようにコビーは言った。

"別れちゃうけどな。ずっと友達だ"

「ぼくは彼らの…仲間じゃありません!!」

ルフィがニッと口角を上げたのが見えた。

「本当かね?」

海兵がルフィに問う。するとルフィは、

「おれ、こいつが今まで何やってたか知ってるよ」
「……?」

思わず、シャオリーは足を止めた。ゾロも振り返り、様子を見る。

「どの辺の島だかわかんねェけど、すっげぇ太った女の海賊がいてさァ。なんつったかな」
「アビルダだよ」
「アルビダだろ」
「何だかイカついおばさんなんだけど、こいつ2年間もそこで…」
「やめて下さいよ!!!」

コビーが、ルフィを殴った。

「……!!」

ルフィはニヤリと笑う。ゾロは小さくため息を吐いた。ああ、そういうことか…

「やったな、このヤロォ!」

お返し、と言わんばかりにルフィはコビーを殴り返す。わざと、本気で。

「そのへんにしとけよ」

ゾロがルフィを止める。鼻血を流して倒れたままのコビー。でもここで助けてしまえば、意味が無い。

「君らが仲間じゃない事はよくわかった!今すぐこの町から立ち去りなさい!!」

怒った海兵が叫び、シャオリー、ルフィ、ゾロは家を出て港へと歩いていった。

「大したサル芝居だったな。あれじゃバレてもおかしくねェぞ」
「あとはコビーがなんとかするさ」

繋いであった小船の縄を解き、3人が船に乗ろうとしたときだった。

「ル!ル!ルフィさんっ!!」

振り向けば、コビーの姿が。

「ありがとうございました!この御恩は一生忘れません!!」

コビーは敬礼をした。つまりそれは、海兵になったという証。

「また逢おうな!コビー!!」

満面の笑みで、ルフィが返事をした。そして船が港を離れると、

「全員敬礼!!」
「え!?」

まるでコビーに倣うように、それでも自分たちの意思でもあるように。
海兵が全員、敬礼をしてシャオリーたちを見送ってくれた。
その姿が見えなくなるまで、シャオリーとルフィは手を降り続けた。

3人を乗せた小船は、広い広い海を渡っていく。
またいつか逢える、その日に向かって。



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