06
「ルフィが基地に入ってった?」
「またムチャクチャな事を…!」
磔場にはルフィの姿は無かった。ゾロに聞くと、奪われたゾロの刀を取りに海軍基地の中へ乗り込んでいったとのこと。
「まー、ルフィなら大丈夫だよ。とりあえずこの縄をほどかなきゃ」
「…! おれに手を貸せば、てめェらが殺されるぞ」
「だって、ゾロは何も悪いことしてないんでしょ?間違ってるのは海軍だよ」
「ぼくはきっと正しい海兵になるんです。ルフィさんが海賊王になるように!」
笑うコビーに、ゾロが驚いて聞き返す。
「か、海賊王だと…!?意味わかってんのか」
「うん、ちゃんとわかってる。ルフィならやれるって私も信じ…、ッ!」
咄嗟に、シャオリーはコビーを抱きしめるようにかばった。
パン、と渇いた音と同時にシャオリーの肩から赤い飛沫が吹き出した。
「おい!」
「シャオリーさんっ!!」
「〜〜ッ、へいき…」
痛みに、シャオリーは顔を歪ませた。弾は貫通している。コビーにも怪我はない。良かった…
「塔の上から…海兵が…!」
「すぐに逃げろ。あいつらが下りてくるぜ」
「わ、私はいい…ゾロの縄を…!」
「おれはいいんだ。1ヶ月耐えれば助かる。だから、」
「助からない!!」
思わずシャオリーは叫んだ。
「3日後に処刑されるんだよ!」
「何を言ってやがる…!」
「1ヶ月の約束なんて、初めから守る気なんて無かったんです。
お願いです。この縄を解いたら、3人で逃げてください!!」
コビーが立ち上がり、再び縄に手をかける。そのとき、
「そこまでだ!
モーガン大佐への反逆につき、お前達3人を今この場で処刑する!!」
海兵たちが、こちらに銃を向けて3人を取り囲んだ。海兵たちの後ろに、そのモーガン大佐がいた。右腕が大きな斧だ。なんだあれ…フック船長の斧バージョン?
シャオリーはちらりと横を見た。戦えないコビーと、身動きの取れないゾロ。
「(どうしよう…ゾロの縄だけでも切れれば…)」
シャオリーの能力なら不可能ではない。ただ、少しでも動いたら100%射殺される。
「(そんなこと言ってられないか)」
「構えろ!」
海兵たちが銃の照準をシャオリーたちに合わせた瞬間、シャオリーの背中から白い翼が開いた。
「なっ、」
「え…シャオリー、さん…?」
「下がっててね、コビー」
左手で右肩を押さえながらも、シャオリーは前に進み出て立ちはだかった。
「……能力者か」
モーガン大佐が呟く。
「だが、能力者だろうが何だろうが関係ねェ。俺の権力の前ではな!」
ビュッ、
白い何かが空を切って飛んでいった。それはモーガン大佐の頬に真一文字の傷をつけた。
「!? ……羽?」
シャオリーの放った1枚の羽だった。柔らかい羽でも、速さがあれば鋭い刃と化す。ツー、と赤い筋がモーガン大佐の頬を流れた。
「権力を振りかざすだけで、強くはないみたいだね」
モーガン大佐のこめかみに青筋がたつ。
「生意気な小娘が…!射殺しろ!!」
銃声が響く、ことは無かった。その代わりに、
「た、大佐…銃が」
「何!?」
銃筒がバラバラに切り刻まれて散っていた。兵の周りには、まるでちくわのように刻まれた銃筒と白い羽が無数に落ちている。
「お、お前…」
「なんとか間に合ったー」
ふへーと息を吐いて、シャオリーが笑った。兵が引き金を引く直前、目にも見えないほどの速さでシャオリーはたくさんの羽を飛ばし、銃筒を切り刻んでいたのだ。
「…って、シャオリーさん!出血が!す、すごいことになってますよ!」
「え?」
撃たれた右肩から血がだらだら流れ、右腕は真っ赤に染まっていた。あ、そういえば頭がくらくらするかも…
「さっき、すごくドキドキしたからかな…ふらふらする〜…」
「しっかりしてください!は、早く止血しないと!あっ、そうだ。ゾロさんの縄で止血すれば」
「その必要はねェ」
「あっ、」
いつの間にか目の前に迫っていたモーガン大佐が、シャオリーの首を掴んで宙に持ち上げた。
「っう、」
背中の翼がぴくりと反応する、が。
「逆らえばこいつの命はねェぞ」
左腕の斧をゾロの首にあてがい、モーガン大佐が脅す。シャオリーの背中から、翼が消えた。
「さて…どうして殺してやろうか。このまま絞め殺すか?それとも斧で八つ裂きにするか?」
少しずつ力の入っていく左手に、シャオリーの首が軋んでいく。
「おれに構うな!シャオリー!」
ゾロが叫ぶが、そんなことできるはずがない。
「(ッ、ルフィ…!)」
シャオリーはぎゅっと目をつむった。
「死ね…!」
どうやら、モーガン大佐はシャオリーを絞め殺すことにしたらしい。まさに、左手に力が入れられようとしたとき、
「シャオリーは死なねェよ!!」
「ぐはっ!」
飛んできたルフィが、モーガン大佐を思いきり蹴飛ばした。解放されたシャオリーは、ルフィにがっしりホールドされて地面に降り立った。
「おれが死なせねェ」
「ルフィ…!」
シャオリーはパアアと笑顔を見せた。ルフィが来てくれた、それだけでこんなにも心強くなる。
「ほら!これ、お前の宝物」
ルフィは、背負っていた3本の刀をゾロに見せた。
「3本?」
「おれは三刀流なんでね」
「ここでおれ達と一緒に戦えば、政府にたてつく悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」
ルフィがゾロに訊ねたが、そんなもの、答えはもう決まっている。
「ここでくたばるくらいなら、なってやろうじゃねェか…海賊に!!」
ニヤリと笑ったゾロに、シャオリーとルフィは万歳して喜んだ。
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