15
「シャオリーッ!起きて!!」
「!!!」

シャオリーはぱちっと目を開けた。目の前にはナミの顔が。

「……? あれ?」
「まったく…こんなとこで寝てたら風邪ひくわよ」
「こんなとこ?」

シャオリーは海岸の崖の上に寝ていた。あれ、私いつの間に寝て…?

「何があったの?」
「何が…って、あ、ああっ!!」

思い出し、シャオリーはガバッと起き上がった。崖の下にはルフィ、ゾロ、そしてにんじん、ピーマン、たまねぎのトリオがいた。ウソップの姿は無い。

「あ、あのね!大変なの!」

***

「えーっ!!カヤさんが殺される!?」
「村も襲われるって本当なの!?」

シャオリーとルフィは、先程聞いた内容を話した。ウソップは、先に村に知らせに行ったに違いない。

「おれ達も早く逃げなきゃ!」

慌てるトリオと共に、シャオリーたちも村へと戻った。

「あ!キャプテン!」

村の入り口で、ちょうどウソップと合流できた。ウソップはどこか落ち込んでいるように見えたが、シャオリーたちの姿を見ると笑いを顔に張り付けた。

「話は聞きましたよ!海賊が攻めてくるってこと、早く村のみんなに言わなきゃ!!」
「はっはっは!そんなの、いつものウソに決まってんだろ!ムカついたから、あの執事を海賊に仕立ててやろうと思っただけさ!」
「「ん?」」

ウソップが笑い出し、シャオリーとルフィは眉を潜めた。

「えーっ、ウソだったんですか!?」
「兄ちゃんと姉ちゃんもキャプテンの差し金かー」
「「???」」
「………でも、おれちょっとキャプテンを軽蔑するよ」
「ぼくも。キャプテンが、人を傷つけるようなウソを言う人だとは思わなかった」
「帰ろうぜ!」

そしてトリオはそれぞれ家に帰っていった。ウソップは引き止めもせず、弁解もせず、ただ3人の後ろ姿を見ていた。

***

「ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ」

夜の海岸。あの後何があったのか、ウソップは話してくれた。
普段からウソをついては村を騒がせているウソップ。そんな彼の言葉を信じてくれる人は誰一人としていなかったのだ。

「だからおれは、この一件をウソにする!それがウソつきとして!おれの通すべき筋ってもんだ!!」
「……!」
「ここはおれの育った村だ。おれはこの村が好きだ!みんなを守りたい…!」

育った村が大好き、か。
シャオリーは髪をキュッと結び直した。

「じゃあ、私も一緒に守るよ」
「え…」
「おれ達も加勢する」

ウソップは、まるで希望を得たかのように顔を上げた。

「お前ら…一緒に戦ってくれるのか…!?な、なんで…」
「だって敵は大勢いるんだろ?」
「乗り掛かった船、だよ」

至極当然といった様子でルフィとシャオリーが答えた。

「う…お、お前ら…!」

ウソップは感激の涙を流した。

***

「この海岸から奴らは攻めてくる。だが村へ入るルートはこの坂道一本だ」

坂道を上がると小さな林があり、林を抜ければ村に着く。

「この坂道を守ればいいんだね」
「簡単だな」
「口で言うのはな。お前ら、何ができる?」
「斬る」
「飛ぶ」
「のびる」
「盗む」
「隠れる」
「「お前は戦えよ!!」」

***

「よし、完璧だ!」

坂道は星明かりに照らされてテカテカと光っている。大量の油を地面にまいたのだ。

「これならツルツル滑って、上がってこれないんだね」
「ああ。そのスキにブチのめす作戦だ」
「お前、よくこんなチョコザイなこと思いつくなー」

空が白み出し、水平線の向こうから太陽が顔を出した。夜明けだ。

「来るぞ…」

誰かが呟いた。5人は、じっと朝日を見つめ、待った。

「………」
「………」
「………」
「来ねェなァ…朝なのに」
「寝坊でもしてんじゃねェのか?」
「低血圧で、朝に弱いのかも」

海賊が来ない。「夜明けと共に村を襲う」という計画だったはずなのに。もしかして本当に寝坊?

「あのさ、気のせいかしら。北の方からオオーッて声が聞こえるの」
「北!?」

ナミが耳に手を当てて言った。シャオリーも耳を澄ます。たしかに聞こえる…
ウソップがギクリと肩を揺らした。

「北にも上陸地点がある…まさか…!」
「海岸間違えたのか!?」
「この海岸で密会してたから…てっきりここかと…!」
「20秒でそこ行くぞ!!」

ルフィが走り出した。シャオリーも後を追うように続いた。
早くしないと、間に合わないと、村が襲われる…!

「(ルフィ、速いな…!)」

もうルフィの姿は視界から消えていた。ていうか、

「(北の海岸って、どっち?)」

林の中でグルグル走り回るシャオリー。もはや自分がどこにいるのか、どこへ向かっているのか、全くわからない。

「(飛ぶか)」

あまり目立つことはしたくなかったけど、この際もうしょうがない!
白い翼を羽ばたかせ、木と同じ高さまで飛ぶ。向こうの海岸に、大きな海賊船が停まっているのが見えた。あれだ…!
近くまで行くと、既にウソップとナミが坂道の上で海賊たちを足止めしていた。

「邪魔だァ!そこをどけ!!」

海賊の一人が石斧を持ってウソップに飛びかかった。しかし、

「邪魔は…お前だっ!」

シャオリーがその男の頭に着地した。男の頭は地面にめり込み、手足が力無くだらりと垂れた。

「「シャオリーッ!!」」
「な、なんだこいつ…羽…?」
「て、天使…!?」

ナミとウソップは喜び、海賊たちは動揺を見せた。シャオリーは白い翼を広げ、海賊たちの前に立ちはだかった。
ルフィとゾロはまだ来ていない…二人が来るまで時間を稼がないと…

「ひ、怯んでんじゃねェ!」
「あんな小娘、一発で終わりだァ!!」

海賊は各々武器を構えてシャオリーに向かってくる。しかし、

「"白羽の舞"!」

白い無数の羽が強い風を伴い、竜巻のように渦を巻いて海賊たちに襲いかかった。海賊たちの身体は、まるでナイフで切られたように鋭い傷がついた。強風も伴った攻撃なので、海賊たちは中々足を前に踏み出すこともできない。海賊たちはそのまま吹き飛ばされ、坂道を転げ落ちていく。

「うわあああっ」 「痛ェェっ」
「畜生!」 「これじゃ進めねェ…!」
「………厄介だな、あの小娘」

海賊たちが口々に弱音を吐き、ジャンゴは小さく舌打ちをする。そして懐からそれを取り出した。

「あの小娘を片付ければ、隣にいる二人は簡単に倒せるな。だったら…」

ジャンゴがチャクラムを左右に振る。それが"催眠術"とは知らないシャオリーは、チャクラムを見つめる。

「ワン、ツー、ジャンゴで、お前は"敵の味方になる"。
ワン…ツー……ジャンゴ!!」


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