人を見た目では判断してはいけない



2011年、M県S市紅葉群杜王町。
先の大震災によって隆起した壁の目、そこに埋められていた所を発見された青年・東方定助。彼は記憶をなくしており、捜索している親類もいなかったところを東方家が身元保証人として引き取った。
この後彼は自らの数奇な運命の秘密と呪いを解く冒険へ繰り出すこととなるのだが、まあそれは置いておいて。


『やあていすけくん、元気ィ?』
「オレの名前はジョースケだ」
ここ東方家に住む人々は皆“個性豊か”だなんて生易しい言葉では片付けられない性格をしているのだが、今定助の目の前にいるこの男も例に漏れない奇妙な人物だった。

名をなまえ、高校生。彼は理解し難い癖を持っている。頻繁に名前を間違えるという癖だ。
これは東方家の男のみが対象であり、逆に女子供には高価な家具を取り扱うかの如く丁寧に接する。ガラス細工でないのはここの面子がそこまで繊細なタイプではないからだとこの前口にしていた。(その後鳩に弄られていた)
常秀にはとこひで、父の憲助は普通に「父さん」と呼ぶ。定助はその癖に全く納得がいかない。普通に呼ぶ方がわざと間違える労力がなくて済むし、なにより康穂に貰った名だ。毎回間違えられると言うのもあまりいい気分はしない。

『あ、大弥チャンお早う。元気?イエス?ノー?』
「イエ〜〜ス……って、言ってもらいたいのォン?」
『イエース!ちょ〜〜ゴキゲンじゃない?』
『「イェ〜〜〜ス」』
末の妹と楽しそうに会話を交わすなまえに、横槍を入れる形になってしまうが「ちょっといいか」と話しかけた。

『あらら、名前間違いはイヤか。なら“ジョジョ”ってのはどうだ』
「ジョジョ?」
『「定」でじょう、「助」でじょ。JOJO!イカしてると思わなァい?』
暫し考える。ジョジョ、ジョジョ……。なぜだか妙にしっくりくるようなそのあだ名を定助は気に入った。イカした楽曲に出てきそうなあだ名だった。
「気に入った──ッ!ならそれで良いよ」
コロリと調子の変わる彼を見ても動じず、ケタケタと笑って片手を差し出した。もう名前を良いようにこねくり回されることがないと安堵し、定助も右手を差し出す。空きっ歯を惜しげもなく晒して宜しくと挨拶をすれば、彼も明るい笑顔でこう答えた。

『改めて宜しくな、ジョジョ!』




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