徐輪至上主義!


『ジョッリヒヒィーーンッ!ジョリーン!ねえ今日こそあたしと結婚してッ!』
「断る」
 部屋に求愛の叫びが木霊した。
 一人は雑誌を見た。一人は手で近すぎる顔を逸らされた。
 ちなみにどちらもれっきとした女性である。


『チキショーまた断られたァー』
 求婚した方の女はあっさりともう一人から離れて、情けない顔と共に肩を落とした。声の調子が明るいのであまりダメージを受けてないようだ。された方の女は横目でちらりと彼女を見て、軽く鼻を鳴らした。
「いい加減に諦めることね……あたしはもう実らない恋はしないって決めてるの」
 一ミリも動くことの無い姿勢。ぱらりとファッション雑誌のページがめくられる。二人の間には確実に、この妙な状況を数回やり取りした慣れがあった。
『そりゃあアンタの元恋人は金に甘えた馬鹿だったけど「ロメオへの暴言は許さない」……真剣に愛し愛されたいってんならあたしがいるのに』
 不満げに呟いた彼女、ナマエはもう一人の女性、徐倫のあぐらをかいた膝に猫のように上半身を乗せた。徐倫は何も言わなかった。ナマエにはそれが不満だった。

『あのね、いい機会だから教えてあげるけど。人って誰かそばに安心できる人がいないと簡単に崩れちゃうのよ。日本の漢字の“人”だって、お互い支えあって成り立つらしいじゃあないの』 
 なおも徐輪の視線は手元に集中していて、国語の教師のようなことを説教する彼女の言葉には耳さえ傾けていない様子だった。かわいらしい柄の布団が敷かれたベッドやフワフワのカーペットでは彼女の言葉の意味だって受け取ってはくれない。 


『……あたし本気よ。徐倫』
「へえ」
『すきよ、あたしアンタのこと一生かけて愛したいの』
 何も変わらなかった。徐倫がナマエの顔を一度だって見てくれないことも、生返事をしているようで実はしっかり相槌を打ってくれる優しさも、臆病風に吹かれて徐倫の“ホントの気持ち”を暴けないのも、全部。

 全部、勇気を出せない彼女達の終わりある青春だ。



『大好きだよ、ジョリーン。あたしのかっこいいお友達』







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